研究実績の概要 |
金属錯体の配位子同士をDNAのような相補的な水素結合で連結した結晶は、遷移金属イオンによる配位構造の堅強性や多様性とともに、弱い水素結合による柔軟性や再結合性を有するソフトクリスタルといえる結晶群の1つである。水素結合でつくられた結晶は、結晶性が良く、mmオーダーのより大きな単結晶をつくることが容易である。水素結合型金属錯体は、結晶構造の配列制御や結晶相転移、結晶変態、ゲスト分子による包接変形などソフトクリスタルとしての機能性を発現しやすい。そこで、MOF やCOFとは異なった物質群であり、水素結合型金属錯体の結晶をナノチャネル型の多孔質結晶に集積させたものをHBCF (Hydrogen-Bonded Coodination Framework)と分類し、その特異な物性について研究してきた。 ① {[Co(Hbim)3]}n(1) (Hbim = 2,2´-biimidazolate monoanion) の脆弱な HBCF ナノ多孔質結晶に不揮発性溶媒である高分子ゲスト (PEG:polyethylene glycol) を多孔質空孔へ導入すれば、空気中で安定な結晶になることが分かった。そして、この結晶1 へ水蒸気などを拡散させて、結晶変態を起こすことを提案した。これは ”open channel” から ”void space” への転移である。② 一方、電気化学的に酸化還元活性な {[RuIII(Hbim)3]}n (2) のHBCF をもつナノ多孔質結晶を合成したところ、その混合原子価状態 {[RuII/RuIII(Hbim)3]nの結晶がプロトン移動を媒介とした新たな原理で駆動する電子伝導性結晶となることを発見した。(Inorg.Chem.56,8513(2017)) また、{[RuII/OsIII(Hbim)3]n (3) では電子貯蔵能があるようなので、この結晶3 についても研究を行った。
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