研究領域 | ソフトクリスタル:高秩序で柔軟な応答系の学理と光機能 |
研究課題/領域番号 |
18H04528
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
吉川 浩史 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (60397453)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 金属有機構造体 / 電気化学反応 / ナノ粒子 / 発光特性 |
研究実績の概要 |
本課題では、発光性金属有機構造体(MOF)およびコロイドナノ結晶といった設計性を有するソフトクリスタル材料を主に研究対象とし、その電気化学的な光学特性の制御と新現象・原理の開拓を目的とする研究を行った。 MOFの電気化学的発光特性制御については、発光特性を示す様々なMOF(Euイオン含有)を合成し、それらを正極とする二次電池を作製して、その電極特性を検討した。その結果、一部の発光性MOFでは、酸化還元反応が観測され、それらについて、電気化学反応中の発光特性を観測できる特殊なセルを用いて、電気化学反応による発光変化の可能性を探り、ごく微小な変化を見出している。このような電気化学反応による発光変化の研究を進めるとともに、光照射により電気化学反応をコントロールする研究も開始した。具体的には、多孔性の有機電荷移動錯体を新規に作製し、その高い酸化還元活性を見出すとともに、それらが光照射により電荷移動を起こし、電気化学反応が光照射前に比べて変化することを確認した。 一方で、コロイドナノ結晶の電気化学的光学特性制御については、CdSeナノ粒子をITO基板に塗布した電極を用いて、その電気化学反応における発光特性変化を観測した。その結果、還元することで消光していくとともに、その変化は不可逆であった。しかしながら、このように電気化学的還元により消光したCdSeに対して、紫外光を照射し続けることで、再び発光が観測されるという新しい現象を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MOFの電気化学的発光特性制御については、様々な発光性MOFを作製し、その電気化学的発光変化を試みたところ、まだ如実な変化は得られていない。しかしながら、電気化学発光特性変化観測システムを完全に立ち上げることができており、より様々なMOFを試すことで実現可能なところにまで来ており、研究は順調といえる。 一方で、コロイドナノ結晶の電気化学的光学特性制御については、CdSeナノ粒子を対象に、電気化学反応中の光学特性変化を見出すところまで来ている。現在のところ、可逆な変化ではないが、より様々なコロイドナノ粒子を検討することで達成可能なことから、研究は順調と考えている。なお、電気化学的に消光したCdSeに光照射を続けることで発光が回復するという新しい現象を見出せている。
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今後の研究の推進方策 |
MOFの電気化学的発光特性制御については、より様々な発光性MOFを作製し、その電気化学的性質を検討する。これまでの研究より、希土類イオンでは酸化還元反応が顕著にみられないことが分かっており、希土類以外の金属イオンを含む発光性MOFの探索と合成、電気化学反応による発光制御を検討する。また、光照射により電気化学反応をコントロールする研究として、光応答性の配位子を含むMOFを作製し、光照射による電解質イオン移動の変化などに基づいた電気化学反応の制御も行っていく。 一方で、コロイドナノ結晶の電気化学的光学特性制御については、発光性の様々な半導体ナノ粒子を検討するとともに、表面プラズモン共鳴を示す金属ナノ粒子などについても電気化学的な光特性変化を試みていく。
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