公募研究
マラリアは世界三大感染症の1つに位置付けられ、年間の罹患者は約2億人、死者は約43万人に及ぶ。近年、既存の抗マラリア薬に耐性をもつ原虫の出現が増加しており、新たな作用機序を持つ治療薬の開発が急務となっている。さらに蔓延地域の経済的、衛生的状況から、安価で且つ、経口薬として単回投与で効果を示すことが求められる。その様な背景のもと、北里生命科学研究所における抗マラリア活性物質探索スクリーニングの結果、Penicillium viticola FKI-4410株培養液中よりPuberulic acid (1)と類縁体が単離された。これら天然物の中でも1はin vitro試験において既存薬であるChloroquineの耐性株に対して高活性を示すことから新たな作用機序を持つと期待される。しかしながらin vivo試験において、腹腔内投与では抗マラリア活性を示すが毒性を示し、更に経口投与では活性を示さないことが判明した。そこで新規抗マラリア薬の開発を目的に、1をリード化合物とした多様的誘導体合成を指向した全合成経路を確立し、構造活性相関の解明と、経口投与において高活性で且つ低毒性な化合物の探索を目指し本研究に着手した。Puberulic acidは7員環芳香環であるトロポン環骨格をもち、分子量が小さいため、安価でかつ簡単に大量合成可能と期待できる。そこで、新たな抗マラリア剤の開発を目標に、閉環メタセシスを鍵反応としてPuberulic acidの7員環骨格を構築しさらに芳香化を達成し、Puberulic acidのグラムスケールでの全合成を達成した。更に、この合成法を利用して様々な誘導体を合成した所、エステル体TRPG-56やTRPG-58はin vivoにおいて高活性且つ毒性を示さず、経口投与においても活性を示した。
2: おおむね順調に進展している
微生物代謝産物より、抗マラリア薬となる興味ある医薬品シーズ分子を3つ見出す事が出来た。
これまで見出した新規天然物をリードとして、様々な誘導体を合成してより特異的で強力な薬剤を創製していく。そして、それをケミカルツール分子として、作用機作を明らかにして行く。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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