研究領域 | 染色体オーケストレーションシステム |
研究課題/領域番号 |
18H04720
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
新海 創也 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (60547058)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 染色体構造 / クロマチン構造 / 染色体動態 / クロマチン動態 / Hi-C / 高分子モデリング |
研究実績の概要 |
近年の染色体構造捕獲法(Hi-C法)の進歩によって、ゲノム3次元構造、および、その時間的な変化(細胞周期・細胞分化・ガン化・病原感染化等)のゲノム配列を超えた理解の仕方が可能になってきた。しかしながら、定量データとしてのHi-Cデータの理解は完全ではなく、Hi-Cデータに基づいた染色体3次元構造モデリングの理論的基盤は未だに整備されていない。また、従来の方法では、静的で平均的な3次元構造を推定してるため、4D動態シミュレーションへ展開することができない。そこで本研究では、高分子物理の観点から、Hi-Cデータに適用可能な染色体3次元構造理論の構築、および、染色体4Dシミュレーションの方法を開発を目指した。 染色体3次元構造理論の構築のため、高分子物理学の観点から理論的に、3C関連技術における遺伝子配列間コンタクトの定式化を行った。その結果、マイクロスケールでの染色体動態に起因するゆらぎという物理的性質がコンタクト頻度と関係することがわかった。 続いて、染色体ポリマーモデルをポリマーネットワークモデルに拡張することで、Hi-Cデータと1対1に対応する高分子モデルを考察した。その結果、任意のHi-Cデータパターンを描く方法を開発した。さらに、上記の手続きで開発される染色体3次元構造理論を逆に使うことで、Hi-Cデータに埋もれた高分子モデルの物理パラメータを抽出するアルゴリズムの開発に成功した。そして、これら一連の方法を「PHi-C(ファイシー);https://github.com/soyashinkai/PHi-C」というソフトウェアとして公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画通り、高分子理論に基づいた染色体3次元構造理論を構築することができた。さらに、ソフトウェアとして公開することができた。論文の原稿はbioRxiv上に公開し、現在、投稿中である。 PHi-C法を使った国際共同研究がLiberman-Aiden博士(USA)のグループと進展することになった。
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今後の研究の推進方策 |
開発したPHi-C法をさまざまなHi-Cデータに適用して、生物学的知見を発見していくことは今後の課題である。次年度では、計画通り、エピゲノムデータ、および、イメージングデータとの比較を通して、PHi-C法によって抽出される染色体3次元構造を決める物理パラメータの生物学的意義を見出す。
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