研究実績の概要 |
性の戦略は決して2極化だけが優位に働くわけではない。オスらしさを隠蔽し、オス同士の激しい競争から逃れつつ、繁殖の機会を狙うという戦略が魚類や鳥類で認められており、オスの多様な表現型、すなわち性スペクトルとして知られてきた。申請者は、前期公募研究において、オスマウスがメスに向けて発する超音波音声(ultrasonic vocalizations, USVs)には発声頻度や構造に幅広い多様性が存在し、オスの性スペクトラム表現型であることを見出した。このUSVsスペクトラムの形成は、性染色体に依存しないこと、周産期と発達期のテストステロンによる神経回路形成、特に主嗅球から扁桃体内側核前部に投与する回路が支配していること、成熟後でも社会的文脈によって、オスマウスがUSVsの構造を使い分けていることを明らかにした。その中で、母子間や社会的関係性によってUSVsがスペクトラム型を獲得する可能性、つまり「社会による性スペクトラムの獲得」を見出した。
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