公募研究
トンボは基本的に視覚で相手を認識することから、雌雄で翅や腹部の色彩・斑紋が著しく異なる種が多く存在する。興味深いことに、幅広いトンボでオスに擬態するメス(オス型メス)や、逆にメスに擬態するオス(メス型オス)が出現する。この現象は、生態学的な面から研究が進められてきたが、多型や性分化に関する分子基盤はほとんど未解明である。本研究では、複数種のトンボのメス多型、オス多型に着目しながら、トンボの性分化メカニズムを包括的に理解することを目指す。2018年度はメス多型およびオス多型が見られるシオカラトンボとニホンカワトンボを用いて、多型の主要な原因であるワックス合成に関わる遺伝子の解析を行った。その結果、シオカラトンボなどトンボ科では17種のELOVL遺伝子が存在し、シオカラトンボではその内1種類がオスおよびオス型メス特異的に発現すること、ニホンカワトンボではシオカラトンボとは異なるELOVL遺伝子がワックス合成に関与することを発見した。前者に関しては、ワックスの人工合成および紫外線反射メカニズムの結果とあわせてeLife誌にて発表した。また、多型の原因遺伝子を調べる目的でチョウトンボおよびニホンカワトンボの比較ゲノム解析を進め、チョウトンボに関しては、多型の原因遺伝子座の構造を決定した。この原因遺伝子座は、予想以上に複雑な構造をとることが明らかになった。また、ニホンカワトンボに関しても、RNAseq解析とRADseq解析によって、多型と相関の見られる領域の絞り込みを進めている。
1: 当初の計画以上に進展している
トンボのゲノム解析、RNAseq解析、RAD-seq解析を順調に進められたことに加えて、シオカラトンボの性分化と紫外線反射に関してeLife誌で論文発表を行うなど、研究は非常に順調に進んでいる。
トンボは、オス多型やメス多型が独立に進化していると考えられるため、複数の種でRNAseq解析、ゲノム解析、RNAiによる遺伝子機能解析を行うことで、トンボで見られる連続的な性分化(性スペクトラム)に関する分子基盤の進化にアプローチする。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 図書 (1件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
eLife
巻: 8 ページ: e43045
10.7554/eLife.43045
生物資源ゲノム解析拠点ニュースレター
巻: 6 ページ: 30
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