ヒッグス粒子の発見によって標準模型は完成したが、素粒子の究極理論が完成したわけではなく、標準模型を超える物理は必ずある。その兆候の可能性として、ミューオン異常磁気能率の実験値と標準模型予言値とのずれが注目されており、今後数年間で実験と理論計算の双方で大きな進展が期待される。本研究ではこの機を逃さず、ミューオン異常磁気能率を突破口として標準模型を超える物理を探索することを目的とする。 最初に取り組んだのが、ミューオン異常磁気能率のずれを説明出来る超対称標準模型の研究である。このため、2019年6月8日から22日にかけて、研究協力者の岩本祥(イタリア・パドヴァ大学、博士研究員)を招聘し、共同研究を開始した。これまでの研究で、まずはミューオン異常磁気能率のずれを説明出来て、かつ最新の LHC Run 2 の制限を逃れているパラメータ領域を同定しつつある。今後、この内容について論文にまとめて発表し、その後、同パラメータ領域の高輝度 LHC 実験での検証可能性を調べる予定である。 2019年6月28日をもって、新学術研究「物質の起源を解明する新たな素粒子模型と初期宇宙進化の理論研究」の交付内定に伴い、重複制限の対象となったため、本補助事業の廃止を申請した。しかし上記の研究については継続して行っており、今年中に論文にまとめて発表する予定である。
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