コライダー実験における新物理探索の感度を上げるためには、解析の精密化が不可欠である。本年度も、トラック情報を含めたジェットの内部構造を機械学習を用いて精査する方法により、新物理感度の向上が期待できるケースについて研究を行う計画であった。特に、フレーバー物理に見られる様々な標準模型からのずれの兆候に対して、これらの新手法を適応することにより、LHC実験における独立な検証の提案を行いたいと考えていた。 機械学習を用いて解析を行うため、前段階の研究として、標準模型からのずれが指摘される、ボトム中間子のタウ粒子を含む崩壊B→D(*)lνを説明するような模型について、LHC実験における感度がどの程度見込まれるかに関する研究を行った。本研究では、有効理論(EFT)とその具体的な高エネルギー理論との解析の比較を行い、有効理論を適応することがLHC実験のエネルギースケールでは近似が悪くなることを指摘した。また、タウ粒子の偏極の方向により、感度が変わることも確認した。この研究成果については、論文にまとめて発表を行った。 現在、これらの結果を踏まえ、このプロセスについて、ボトム同定を利用した解析に拡張することで感度の向上が図れるかを検証している。この際、ボトム同定や、タウ同定の部分にジェットの内部構造に機械学習手法を適応することの効果を議論したい。また、LHC実験において、トラック情報等に機械学習を用いてB_c→τν崩壊を同定する方法に関する研究も行っている。更に、ヒッグス粒子のボトム湯川結合の符号を決定する方法についても研究も進めており、成果がまとまり次第、論文にまとめる予定である。 また、上記の発表論文、前年度の発表論文に関して、招待講演を含むいくつかの講演を行ない、国内外へ研究成果の発信を行った。
|