研究領域 | ヒッグス粒子発見後の素粒子物理学の新展開~LHCによる真空と時空構造の解明~ |
研究課題/領域番号 |
19H04617
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
浅岡 陽一 早稲田大学, 理工学術院総合研究所(理工学研究所), 主任研究員(研究院准教授) (40345054)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 暗黒物質 / CALET / 間接探索 / 全電子スペクトル |
研究実績の概要 |
宇宙の27%を占める暗黒物質の正体は,素粒子と宇宙にまたがる大きな謎である.宇宙背景放射や大規模構造の観測から,暗黒物質は初期宇宙の熱平衡状態から膨張・冷却の過程で凍結され残存した未知の素粒子(WIMP)であるという仮説が有力となっている. 宇宙線電子は,ガンマ線や反粒子を含む暗黒物質間接探索の中でも,特に局所宇宙に感度のあるユニークなプローブである. 2018年度にPhysical Review Lettersにて発表されたCALET全電子スペクトルには,数百GeV付近と1TeV付近に微細な構造が存在する可能性がある.本研究ではこの着目して,暗黒物質探索に新たな光を当てることを目的とする. 2019年度には,数回の研究会に参加し,また自ら小研究会を開催することによって知己を得た理論研究者と共同して,物理的な動機付けのあるモデルを構築した.他観測・他実験における制限や銀河内伝播過程の影響を考慮した上で,CALETの全電子スペクトルを暗黒物質探索の観点から解釈する.特に,現在のところ暗黒物質と原子核の反跳による信号を探索する直接観測や,ガンマ線を用いた間接観測により厳しい制限が与えられていることから,それらのチャンネルへのカップリングが抑制されたモデルにおける電子観測の意義について議論している. それと同時に,国際宇宙ステーションにおける長期安定観測を継続してスペクトルの精度を向上させるため,軌道上運用とその効率化を実施した.既に論文作成時の2倍を超える統計が得られており,全電子スペクトルのさらなる高精度化が期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最大の目的は、国際宇宙ステーション軌道上で安定に稼働し,データを着実に蓄積しているCALETの宇宙線電子スペクトルを用いた,暗黒物質の間接探索を行うことである.そのためには理論研究者との共同研究が必要であったが,本研究経費の獲得を契機として数回の研究会に参加し,また自ら小研究会を開催することにより,実際に共同研究を開始している.CALETの電子スペクトルを暗黒物質探索に使用する論文のプレプリントを arXiv:2004.04304 に発表しており,順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,CALET の全電子スペクトル測定結果を用いて暗黒物質の間接探索を行う. CALETの最新結果は話題になったDAMPE の1.4 TeV のピークを否定する一方で,陽電子過剰に対応する数百GeV 領域に加え,1TeV領域でも示唆的なスペクトル構造の兆候を示している.本研究では特に,統計的な有意性の大きい,数百GeV領域での急激な流束減少を暗黒物質の対消滅として解釈する可能性を引き続き探求する. 昨年度に参加・開催した数回の研究会にて知己を得た理論研究者と共同して,物理的な動機付けのあるモデルをさらにブラッシュアップし,他観測・他実験における制限や銀河内伝播過程の影響を考慮した上で,CALETの全電子スペクトルを暗黒物質探索の観点から解釈する. それと同時に,国際宇宙ステーションにおける長期安定観測を継続してスペクトルの精度を向上させるため,軌道上運用とその効率化を実施す る.
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