研究実績の概要 |
多くの被子植物の花の内側基部には、蜜を分泌する特殊化した器官である蜜腺がある。蜜腺は進化の過程で、他殖により遺伝学的多様性を担保し多様な種分化を生み出した重要な因子と考えられるが、蜜腺がどこでどのように作られて、そして消えていくのかという分子メカニズムは、まだ分かっていない。本申請研究では、シロイヌナズナの蜜腺をモデル系として蜜腺の形成を制御する遺伝子カスケードの解明を目指した。蜜腺形成の鍵転写因子CRCの突然変異体および誘導系を用いて、RNA-seqによる下流ターゲット遺伝子のスクリーニングを行った。その中で、実際に鍵穴として作用するリアリゼーター(realizator具現化)遺伝子を同定し、その機能を進めた。野生型とcrc変異体の蜜腺のサンプルを用いて遺伝子発現プロファイルを網羅的に比較することで、発現が変動した遺伝子は303個同定した。同時に、crc変異体にgCRC-GFPを導入した植物を作出し、ChIP-seqにより CRCが直接結合する遺伝子として、1,881個を同定した。RNA-seqとChIP-seqで同定した遺伝子の内、重複していた遺伝子は77個存在した。これらの遺伝子のGO term解析では、器官の形成、植物ホルモンオーキシンへの応答や糖代謝などが見つかった。その中には蜜腺の分化を制御する転写因子BLADE-ON-PETIOLE1 (BOP1)や、スクロース輸送体SWEET9、オーキシンシグナル系の制御因子であるMACCHI-BOU4(MAB4)等が含まれていた。これらの結果から、CRCは蜜腺の分化や糖の輸送、そして蜜腺器官形成なども制御している可能性が示唆された。
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