コロナ禍により現地調査は遅延していたが、2022年度にアゼルバイジャン、ウズベキスタン、タジキスタンでのゾロアスター教拝火神殿調査を集中的に実施した。 ①アゼルバイジャンでは、バクー郊外の近代ゾロアスター教拝火神殿の調査をきっかけに、コーカサス山脈奥地にある拝火神殿遺跡やダフマ遺跡の存在を確認した。これらは、イランからコーカサス山脈を越えて現在のロシアやウクライナに至るまでのゾロアスター教ネットワークを想定させる資料だったが、ロシア語やアーゼリー語の準備が無かったので、実見するには至らなかった。アゼルバイジャン北部やロシア連邦ダゲスタン共和国の調査は、今後の課題である。 ②ウズベキスタン・タジキスタンでは、ブハーラー郊外のヴァラフシャ遺跡、サマルカンド郊外のアフラースィヤーブ遺跡、ジャルテパ遺跡、カーフィル・カラ遺跡を訪問した。また、サマルカンド考古学研究所のムーミン・ハーン所長、国際中央アジア研究所のドミトリー・ヴォヤキン所長と面談した。更に、ドゥシャンベのタジキスタン古代博物館を訪問し、コロナ禍以降の研究動向を把握した。残念ながら、当初計画していたパミール高原調査は、気候がこれに適さず、現地研究者によって止められたので果たさなかった。 これらによって、ゾロアスター教拝火神殿の立地条件に関する新知見を得ると共に、現地の研究者による研究の進捗状況や、今後の研究計画を理解した。中央アジアで大規模に計画されているゾロアスター教拝火神殿遺跡の悉皆調査に、日本人研究者がどこまで関与できるかが今後の課題である。
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