本課題は、精神的ストレスを暴露された脳内の多階層オミックス解析を実施し、ストレス性精神疾患病態の構成的な理解を目指している。昨年度までに、ストレス応答性前障神経細胞のシングル細胞トランスクリプトーム解析を実施し、複数の細胞群に分類した。これらの細胞群の役割を明らかにするため、各細胞の回路情報を全脳イメージングにより明らかにした。特にストレスや恐怖に応答することが知られている扁桃体基底外側核からの入力があることを見出した。また、扁桃体から前障に投射する神経終末を活性化させることにより不安様行動が惹起されることを見出し、ストレス誘発不安様行動に重要な神経回路であることを示した。さらに、前障ストレス応答性神経細胞の分子特性として、高発現する4つの遺伝子を同定することに成功した。今後は、これらの分子の発現制御がストレス性精神疾患の発症に関与するのかについて詳細に解析することにより、ストレス性精神疾患の病態を創出する最小パーツの理解に貢献したい。
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