公募研究
異方的に伸縮する筋肉のような材料を実現するためには、材料が異方性と柔軟性を示す必要があり、結晶に由来する異方的な集積構造は異方性の最適なプラットフォームとなると考えられるが、伸縮を可能にする柔軟性を付与する方法論の開発が不可欠である。筆者はこれまでに多孔性結晶である金属有機構造体(MOF)の有機配位子を事後修飾によって架橋する「結晶架橋法」の開発を行なってきたが、これは結晶を柔軟化する有用な手法の一つであると考えられる。これまでは①MOFの事後修飾反応の開発、②MOFを原料としたソフトマターの精密合成、③結晶架橋法を用いた異方変形材料の合成の3点に着目して検討を進めてきた。これまでの研究でアジド基を有するAz2tpdcと反応性官能基を有さないピラー配位子である4,4’-ビピリジルを銅(II)イオンや亜鉛(II)イオンと組み合わせて結晶化させることで二重相互貫入網目構造のピラードレイヤー型MOFが得られ、これをゲスト分子とのクリック反応によって架橋した場合に溶媒分子の出入りによってMOF長軸方向への一軸上の大きな変形挙動を示すことを見出している。より長いジピリジルベンゼンをピラー配位子として用いた場合には三重相互貫入網目構造のピラードレイヤー型MOFが得られ、加水分解によって平行六面体へと変形する斜方膨潤挙動を示すことを前年度に報告した。レイヤー配位子を芳香環3枚のAz2tpdcから芳香環5枚のAz2qpdcに変更したところ、三重相互貫入網目構造のピラードレイヤー型MOFが得られ、加水分解によってMOF短軸方向への大きな膨潤を示すことが分かり、MOF長軸方向へはむしろ若干収縮が見られた。有機配位子の歪の有無が生み出す反応点配列の変化が膨潤挙動を決定していることが示唆された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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