研究領域 | ソフトクリスタル:高秩序で柔軟な応答系の学理と光機能 |
研究課題/領域番号 |
20H04656
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
西堀 英治 筑波大学, 数理物質系, 教授 (10293672)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ソフトクリスタル / X線回折 / その場観察 |
研究実績の概要 |
本年度は、2018年度より進めているSPring-8 のマシンタイムを利用した領域内の研究者との共同研究を実施しつつ、ボールミルを使用した装置開発を開始した。 1.実験室X線回折装置によるその場観察X線回折測定 既設の実験室単結晶および粉末X線回折装置を利用して、2018~2019年度の公募研究で開発した装置を利用した蒸気圧下での単結晶および粉末X線回折の予備測定を行い、ベイポクロミズムを示すPt錯体の実験条件を決定した。2.SPring-8における放射光X線回折その場観察測定 SPring-8にて蒸気下の放射光X線回折その場観察測定を行った。マシンタイムは、パートナーユーザー、長期利用課題のマシンタイムを利用した。特に、70Kを切る低温測定やPt錯体の水の吸着実験などを成功裏に行うことに成功した。3.ボールミルを使用した機械的刺激下でのその場観察用の装置開発 ボールミルを改造し、X線その場観察が可能な装置を構築している。アーム部分の改良、3Dプリンタを用いた専用の試料セルの作成、動作確認、遠隔操作部分の開発などを行った。厚みを複数変化させた試料セルを作成済みで2021年度に実験を開始する予定である。4.放射光を利用した領域内共同研究 上記以外にも放射光X線回折が利用可能な研究について領域内の研究者との共同研究を進めた。粉末回折と単結晶X線回折でマシンタイムを確保できているためこのマシンタイムを活用し、領域の成果を高めることを目指した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウィルス感染症の影響で、4月から6月末まで実験をほとんど行うことができなかったが、実験開始後より、精力的な実験を進め、この状況下を生かした装置の開発などの地道な研究を進めることができた。特にボールミルのその場観察装置の開発では、大学の実験室にて1000時間以上におよぶ耐久試験を繰り返すことで、アーム部分の5度にわたる改良など、多くの発展がみられた。現在では、200時間以上最大出力で稼働可能なアームの部品の選定ができている。また、3Dプリンターを使ったジャーの作成など、部品の作成でも独自性の高い開発研究を行うことができた。さらに、ジャーの厚みを変えたものの複数の作成など、実験が可能になったときに想定される様々な状況に対応する準備が一通り終わっている状況にある。一方で、放射光実験に関しては、マシンタイムが次年度に持ち越されたことなどもあり、十分に進められはしなかった。ただし、同じ量のマシンタイムが2021年度前半に確保されることになったため、2021年度に全ての実験は終えられる予定である。装置開発をじっくり進められたため、放射光実験はできなかった分を差し引いても全体で見ればおおむね順調に進展したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発してきた溶媒その場観察装置、ボールミルその場観察装置を利用した放射光その場観察の研究を2021年度は強力に推進していく。すでに、領域内の研究者から複数のこれらの装置を使うための試料の提供を受けており、すぐにでも実験を開始できる状況にある。2021年度は、2020年度から持ち越しになったその場観察実験を集中的に進める。このために、4月から7月まで、1月平均3回以上のマシンタイムを計画的に配置した。これらのマシンタイムを有効に活用し、ソフトクリスタルの学理構築に資する研究を進めていく。実験室装置についても、コロナウィルス環境の中で、開発したその場観察装置を利用した予備実験が可能なように開発を進めており、SPring-8などの放射光が利用できない夏の期間などにも、十分に実験研究ができる状況にある。 今年度の後半はデータ解析を集中的に行うとともに、本領域の研究で進めてきた多くの試料に対する結果の発表と論文執筆も進める。これまでに10グループを超える領域内共同研究を進めているため、それらすべてで論文発表につなげられるように尽力していく。
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