本研究の目的は、微弱な外部刺激に応答し特性変化する「ソフトクリスタル」の結晶構造の外部刺激に伴う変化を、放射光を利用したX 線回折によるその場観察により解明することである。ベイポクロミズムのその場観察を行うために、SPring-8と大学の実験室両方でキャピラリー試料の溶媒吸着実験が可能なシステムを構築した。このシステムを利用し、これまでに、領域内の複数の共同研究者と10種類を超える物質について放射光その場観察実験を進めている。また、SPring-8のパートナーユーザー課題、長期利用課題など長期にわたりマシンタイムを利用可能な課題を利用し、小角散乱や80K以下の低温実験も進めている。2018年から入手が特に困難になったHeガスを利用した極低温実験についても、SPring-8で利用可能な環境を確保し、研究を進めている。加えて2020度より、ボールミル粉砕のその場観察実験に向けた装置開発を開始した。 ベイポクロミズムのその場観察については、領域内の共同研究によるPtBu錯体の単結晶を用いたその場観察データの構造解析に成功した。この研究によって、この系の無水物から水和物への相転移には中間相が存在し、中間相自体も単結晶試料であることが判明した。この成果は、領域代表の加藤先生のグループとの共同研究であり、現在までに成果の論文投稿を済ませたところである。 ボールミル粉砕のその場観察実験については、SPring-8にボールミルを設置してのその場観察実験を開始した。これまでに、装置の性能評価用のアルミニウム、ニッケル、銅などの単体金属のボールミル粉砕その場観察実験を進め、問題点洗い出しと、測定方法の確立を行った。
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