研究領域 | ソフトクリスタル:高秩序で柔軟な応答系の学理と光機能 |
研究課題/領域番号 |
20H04659
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 康介 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (40595667)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 金属酸化物 / ポリオキソメタレート / ナノ材料 / 構造変換 / 触媒 |
研究実績の概要 |
本研究では、金属酸化物クラスターの精密合成技術を基盤とした材料設計を行うことにより、様々な刺激に応答して構造や物性が変化する金属酸化物材料である「金属酸化物ソフトクリスタル」を創製すること目的としている。 金属酸化物ソフトクリスタルの開発を行うためには、新規な金属酸化物クラスターの設計と合成が必要不可欠である。研究代表者らは、種々の分子状タングステン酸化物の合成に成功してきたが、分子状モリブデン酸化物は安定性が極めて低いためその合成や利用が困難であった。今回、分子状モリブデン酸化物の欠損部位にピリジンを導入して安定性を向上させることにより、分子状モリブデン酸化物に金属多核構造を導入することに初めて成功した。特に、反応条件を制御することにより、導入金属の核数や配列を制御できることを見出した。さらに、分子状モリブデン酸化物の構造変換により、分子鋳型として機能する新たな欠損種の合成にも成功した。 また、分子状金属酸化物と金属ナノクラスターからなる複合材料において、外部刺激に応じて、電子状態変化を伴って分子構造が変化することを見出した。特に、この化合物は1 nmを超える分子性材料でありながら、結晶状態での顕著な構造変換が進行した。さらに、本領域内での共同研究において、バナジウム酸化物クラスターが優れた可視光応答型触媒作用を示すことを明らかにした。反応条件を制御することにより生成する酸化活性種が変化し、スルフィドの光酸化反応における生成物の選択性をスイッチできることを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、これまで合成や利用が困難であった分子状モリブデン酸化物を用いて、金属多核構造を設計することに初めて成功したことに加えて、分子鋳型として機能する新たな分子状モリブデン酸化物の設計にも成功し、金属酸化物ソフトクリスタルの開発において重要な成果を得ることができた。また、外部刺激によって結晶相での構造変化が進行する材料の開発にも成功しつつある。以上より、当初の研究計画に沿って研究が進捗していると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に開発した分子状モリブデン酸化物を利用した金属多核構造の設計法や、新規構造の合成法をさらに発展させることにより、種々の遷移金属や希土類金属を導入した分子状モリブデン酸化物の合成を行い、金属酸化物ソフトクリスタルの開発を進める。特に、本合成法を適用できる金属種の拡張を検討するとともに、複数種の金属をその種類、数、位置等を制御して導入した分子状モリブデン酸化物の合成についても検討を行う。さらに、これらのアニオン性金属酸化物クラスターとアルキルアンモニウム等の有機カチオンとの複合結晶を作成し、外部刺激に応答して結晶相での分子構造変換が進行する材料の開発を進める。特に、これまでの結果を踏まえて、ガスや溶媒蒸気等の外部刺激による結晶構造の変化を詳細に調査するとともに、構造変化のメカニズムやダイナミクスについての検討も行う。
|