研究領域 | ソフトクリスタル:高秩序で柔軟な応答系の学理と光機能 |
研究課題/領域番号 |
20H04660
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
倉持 昌弘 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 助教 (60805810)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | X線回折 / 時分割計測 / 結晶粒子動態 / 格子ダイナミクス / ソフトクリスタル |
研究実績の概要 |
結晶自身のX線回折現象を利用した時分割回折X線ブリンキング法(Diffracted X-ray Blinking, DXB)を駆使し、ソフトクリスタルのラベルフリー結晶動態計測を行なっている。マクロ力学制御場でのソフトクリスタルの動的特性を、粒子集合体の運動、結晶格子面の構造ゆらぎ、という異なる空間スケールで捉えることに取り組んできた。スクリーニング的な試料、計測条件の選定をラボX線で網羅検証し、より精細な動的情報取得には、放射光を用いた超高分解能計測を実施し、また高次データ解析技術を導入することで、運動成分の検出限界向上を実現することで、ソフトクリスタルの構造特異的な動的性質を明らかにすることを目的とした。 特に、本領域に参加することで、複数の共同研究に取り組むことができた。まず、光相転移を示す試料測定では、検証実験として、熱刺激による格子運動の変化を測定した。温度域を20度から-60度まで変化させ、そのときの格子動態を測定した。その結果、相転移前後を示す温度域で、全く異なる格子動態を in situ で捉えることができた。また、エレクトロクロミック (EC) 材の測定では、ITO基板内に含まれる Ag の動態計測を実施することで、EC 材の色特性と Ag の動的性質の関係を調べることを目的とした。提供試料である EC 材は厚みが数ミリ以上あり、透過型X線計測には不向きであった。そこで、膜厚な試料でも測定できるように、反射型の測定系を構築し、従来は検出不可だった Ag 回折を得ることができた。さらに、分子ローターを用いた時分割測定にも取り組み、ノンラベルで分子の回転運動有無を明確に検出することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光相転移を示す試料では、熱刺激に対する相転移前後の格子動態を in situ で捉えることができた。また、EC 材におけるAg動態計測では、反射型装置を構築することで、従来は不可能であった膜厚試料の測定ができるようになり、Ag動態の in situ 測定が可能となった。さらに、分子ローターの時分割測定では、回転運動をラベルフリーで検出できることを示せた。
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今後の研究の推進方策 |
光相転移を示す試料に関して、光刺激有無に対する相転移前後の格子動態を in situ で捉える。また、EC 材におけるAg動態計測では、EC材の色特性と Ag 動態の関係を明らかにするため、異なる色を示す EC 材における Ag 格子動態を in situ 測定する。分子ローターの時分割測定では、温度依存性の検証、時分割性を変えた測定を行い、他計測結果との比較し、本手法の妥当性・有効性について評価・検証を進める。
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