公募研究
1. はじめに速度論的に得られるネットワーク錯体は準安定なソフトクリスタルであり、機械的刺激や加熱などの外部刺激に応じて柔軟な構造変化を示す。本研究では、その場観察X線回折法により光定常状態の発光性ネットワーク錯体の構造を決定し、過渡吸収分光法および理論計算と組み合わせることにより強い発光の起源を解明することを目的とする。その場観察X線回折実験のための分光学的基礎物性の精査および単結晶・粉末結晶を用いて光定常状態・過渡状態のX線回折実験を行った。2. 研究成果臭化銅四核錯体と4座ピリジン配位子(TPPM)をDMSO中で速度論的に自己集合することにより臭化銅二核錯体Cu2Br2をコネクターとする準安定な細孔性ネットワーク錯体を合成し、真空中で加熱すると強く発光する結晶性粉末錯体(Br体)が得られる。Cl体も合成し、これらの光物性を精査した。光物性評価(UV-vis、発光スペクトル、発光量子収率)を結晶構造に基づいてTD-DFT計算により電子遷移に対するゲストの寄与について調べた。光物性評価は吸収・発光・及び発光量子収率の測定をすべて固体で行った。Br体では発光量子収率13.2 %と高発光が観測された。また、Br体とCl体は同じネットワーク骨格を有しているにもかかわらず吸収スペクトルの極大波長とバンド幅が違っていたことから、ゲストが遷移に影響を及ぼしている可能性が示唆された。また、TD-DFT計算からも振動子強度の大きい遷移の中にゲスト上の軌道の寄与も見られ、空間を介したゲスト―ホスト電荷移動の存在が明らかになり、発光の起源はゲストからホストへの電荷移動(TSCT)およびホスト内の電荷移動(MLCT)によるりん光であった。特にゲストからホストへの電荷移動励起はネットワーク錯体固有のものである。以上の成果をInorg.Chem.で発表した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 1件)
Chem. Lett.
巻: 51 ページ: 356-359
10.1246/cl.210817
Inorg. Chem.
巻: 60 ページ: 9273-9277
10.1021/acs.inorgchem.1c01451
巻: 60,17 ページ: 13727-13735
10.1021/acs.inorgchem.1c02100
巻: 60 ページ: 17858-17864
10.1021/acs.inorgchem.1c02468