研究実績の概要 |
本研究は,ソフトクリスタルの外場(光・温度・力学場)応答による動的過程の熱物性の異方性発現に注目し,ミクロ・ナノスケール熱物性新規測定方法論の開発と,ソフトクリスタルの熱物理と相転移の学理解明を目指した.①フォスフォTWA法(蛍光温度波熱分析法),②フォスフォTWAイメージング法の開発,においては,蛍光色素(ローダミンB/CdSe/ZnS量子ドット)の変調レーザー照射誘起蛍光スペクトルの温度依存性を利用し,試料内を伝播する温度波を光電子増倍管またはCCDカメラにより高感度に検出し,ロックインアンプにより位相を測定することにより,熱拡散率を求める方法論を確立した.蛍光スペクトルによる温度波応答検知の可能性を確認し,MEMS回路と併用することで,非接触ミクロスケール熱拡散率測定法を構築した.③MEMS型μ-TWA法の開発,においては,マスクレス露光装置を用いた光リソグラフ・リフトオフ法による回路描画により,複合型温度センサーを作製し,センサー線幅数μm程度での高空間分解能・熱拡散率測定,温度走査下測定への適用を可能とした.④化学発光イメージングTWA同時測定法の開発を行い、化学発光のメカニズムを,蛍光団を導入したアダマンチリデンアダマンタン1,2-ジオキセタンの 結晶化学発光特性と熱物性の相関から明らかにした.⑤ミクロ単結晶の非弾性X線散乱(IXS)測定,では,テレフタルアミド (TPA)単結晶のα,β相転移のIXS測定のため,ペルチエ型試料保持・温度可変ステージをSpring8_BL35に設置・設計し, 12個のアナライザーを使用し,12個の移行運動量(Q)のスペクトルを同時に測定し,meVエネルギー・スケールでのソフトクリスタルのダイナミクス:フォノン(素励起)分散関係の実験的観測と相転移の学理解明を進めた.
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