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2020 年度 実績報告書

機械的刺激応答性ソフトクリスタルの合理的創製とその定量解析法の高度化

公募研究

研究領域ソフトクリスタル:高秩序で柔軟な応答系の学理と光機能
研究課題/領域番号 20H04665
研究機関横浜国立大学

研究代表者

伊藤 傑  横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80724418)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワードソフトクリスタル / メカノクロミック発光 / 有機色素 / トライボロジー
研究実績の概要

「こする」などの機械的刺激により発光特性が変化する「メカノクロミック発光」は、ソフトクリスタルが示す代表的な刺激応答挙動の一つである。前回の公募研究で研究代表者は、ソフトクリスタルの機械的刺激に対する応答性を定量的に評価するための装置を開発することに成功した。また、二成分系有機ソフトクリスタルを創製し、メカノクロミック発光材料の新たな設計指針を確立した。本研究では、メカノクロミック発光性ソフトクリスタルのさらなる構造開拓と機構解明を実現することを目的としている。令和2年度の研究では、分子内に二つのピレニル基を有するジアミン誘導体を種々の発光性有機色素と混合した二成分系ソフトクリスタルのメカノクロミック発光について詳細な解析を行った。波長変化量が300 nmを超えるメカノクロミック発光や、機械的刺激の強さに応じて発光色が二段階で変化するメカノクロミック発光について、領域内共同研究による1粒子蛍光観測等を通して、その機構を明らかとした。また、分子内に二つのピレニル基を有するキラルソフトクリスタルの円偏光発光(CPL)特性が、二種類の機械的刺激に応答して変化することを領域内共同研究により明らかとした。さらに、チエニル基を有するドナー・アクセプター型有機色素が、メカノクロミック発光特性の異なる多形・擬多形ソフトクリスタルを形成することを見出した。これらの知見は、メカノクロミック発光性ソフトクリスタルを合理的に創製する手法の確立につながることが期待される。一方、ソフトクリスタルの機械的刺激に対する応答性を定量的に評価するための装置を用いた研究では、メカノクロミック発光性ソフトクリスタルのエネルギーダイアグラム解明につながる新たな知見を得た。また、本装置を用いた領域内共同研究により、機械的刺激を加えることで発光するソフトクリスタルのトライボルミネッセンスを観測することに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の計画から分子設計の見直しを行ったが、分子内にピレニル基を二つ有する有機色素を用いた二成分系有機ソフトクリスタルを創製することで、当初の計画通り、機械的刺激に段階的に応答するメカノクロミック発光を実現し、その機構を明らかとすることに成功した。また、計画外の新たな領域内共同研究を実施し、キラルソフトクリスタルが二種類の機械的刺激に応答する円偏光発光(CPL)スイッチングを示すことを見出した。さらに、当初計画で想定していなかったチエニル基を有するドナー・アクセプター型有機色素により、多形・擬多形ソフトクリスタルのメカノクロミック発光に関する興味ある知見を得ることができた。これらの成果を3報の領域内共著論文として投稿中である。一方、自作の自動回転装置を用いた機械的刺激に対する応答性の定量解析では、当初の計画で想定していなかった新たな知見を得ることができた。また、当初の計画通り、自動回転装置を活用することで、ソフトクリスタルが示すトライボルミネッセンスを観測することにも成功している。以上の成果を総合すると、本研究課題は当初の計画以上に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

令和3年度は、当初の計画通り、各種ホスト-ゲスト複合型二成分系ソフトクリスタルについて種々の組み合わせを検討することで、ゲスト分子による機械的刺激応答性の制御を実証する。また、令和3年度に得られた知見に基づき、多彩なメカノクロミック発光特性を示すキラルソフトクリスタルや複数の刺激に応答するドナー・アクセプター型ソフトクリスタルの創製にも取り組む。さらに、機械的刺激応答性の定量評価装置を用いた研究では、ソフトクリスタルが示すメカノクロミック発光のエネルギーダイアグラムを解明するとともに、トライボルミネッセンスの機構解明につながる知見を獲得する。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 3件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Recent Advances in Mechanochromic Luminescence of Organic Crystalline Compounds2021

    • 著者名/発表者名
      Suguru Ito
    • 雑誌名

      Chemistry Letters

      巻: 50 ページ: 649-660

    • DOI

      10.1246/cl.200874

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Two types of two-step mechanochromic luminescence of phenanthroimidazolylbenzothiadiazoles2020

    • 著者名/発表者名
      Shohei Takahashi, Sayaka Nagai, Masatoshi Asami and Suguru Ito
    • 雑誌名

      Materials Advances

      巻: 1 ページ: 708-719

    • DOI

      10.1039/D0MA00198H

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Relationship between Crystal Structure, Crystal Morphology, and Mechanochromic Luminescence of Triphenylimidazolylbenzothiadiazole Derivatives2020

    • 著者名/発表者名
      Suguru Ito, Sayaka Nagai, Takashi Ubukata, Takuya Ueno, and Hidehiro Uekusa
    • 雑誌名

      Crystal Growth & Design

      巻: 20 ページ: 4443-4453

    • DOI

      10.1021/acs.cgd.0c00253

    • 査読あり
  • [学会発表] 機械的刺激に応答する発光性ソフトクリスタルの合理的創製と定量解析2021

    • 著者名/発表者名
      伊藤傑
    • 学会等名
      ソフトクリスタル第6回公開シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] Crystal-to-Amorphous Phase Transitions of Mechanochromically Luminescent Organic Molecules2021

    • 著者名/発表者名
      Suguru Ito
    • 学会等名
      The 101st CSJ Annual Meeting, Luminescence Chemistry Ensemble: From the Aggregate Model to Amorphous Solid
    • 招待講演
  • [学会発表] 有機結晶の精密構造制御に基づく高機能性発光センシング材料の開発2021

    • 著者名/発表者名
      伊藤傑
    • 学会等名
      日本化学会第101春季年会 若い世代の特別講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] チエニルベンゾチアジアゾール誘導体の結晶構造とメカノクロミック発光2021

    • 著者名/発表者名
      吉田遼平、伊藤傑
    • 学会等名
      日本化学会第101春季年会
  • [学会発表] ピリジル置換イミダゾール誘導体の酸応答型メカノクロミック発光2021

    • 著者名/発表者名
      窪田陸人、袁燕秋、吉田遼平、伊藤傑
    • 学会等名
      日本化学会第101春季年会
  • [学会発表] メカノクロミック発光性結晶材料に対する定量的な機械刺激応答性解析2020

    • 著者名/発表者名
      伊藤傑、永井彩香、池谷美菜子、眞下峻希、関朋宏、伊藤肇、相良剛光、務台俊樹、大山陽介、中野健
    • 学会等名
      2020年web光化学討論会
  • [学会発表] Sequential Mechano- and Thermo-responsive Tricolor Switching of Luminescence for Thienylbenzothiadiazole Derivatives2020

    • 著者名/発表者名
      Ryohei Yoshida, Hayato Suzuki, Minako Ikeya, Shohei Takahashi, Suguru Ito
    • 学会等名
      Online Annual Meeting on Photochemistry
  • [学会発表] ジベンゾフラン型ビス(ピレニルメチル)ジアミン誘導体の二成分系二段階メカノクロミック発光2020

    • 著者名/発表者名
      宗像元康、関根涼平、池谷美菜子、淺見真年、伊藤傑
    • 学会等名
      第10回CSJ化学フェスタ2020
  • [学会発表] 機械的刺激と熱に段階的に応答するドナー・アクセプター型色素の三色間発光スイッチング2020

    • 著者名/発表者名
      吉田遼平、鈴木颯人、池谷美菜子、高橋昌平、伊藤傑
    • 学会等名
      第10回CSJ化学フェスタ2020
  • [備考] 横浜国立大学 研究者総覧(伊藤傑)

    • URL

      https://er-web.ynu.ac.jp/html/ITO_Suguru/ja.html

  • [備考] 有機化学研究室(伊藤傑研究室)

    • URL

      http://ito-lab.ynu.ac.jp/index.html

  • [産業財産権] インドリルベンゾチアジアゾール誘導体、有機蛍光材料および硬化膜2020

    • 発明者名
      森永貴大、伊藤傑、髙橋昌平
    • 権利者名
      国立大学法人横浜国立大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2020-172831

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公開日: 2021-12-27  

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