特定の刺激に応答し、構造・物性・反応性を瞬時に変化させるソフトクリスタルが近年注目されている。一方、これらの多様かつ複雑な振る舞いを支配しているメカニズムに関しては理解が十分に進んでいないのが現状である。そこで本研究では、機械的刺激、光、溶媒蒸気、イオンの添加などの外部刺激によって誘起される有機・無機材料の構造-発光変化をその場観測できる1分子(1粒子)蛍光顕微鏡システムを開発し、反応ダイナミクスの解析に応用した。 有機無機ペロブスカイトは次世代の太陽電池や発光デバイスへの応用が期待されている。本研究では、ハロゲン混合型ペロブスカイトナノ粒子における光誘起構造-発光変化などを単一粒子レベルでin-situ観測し、その機構の一端を明らかにした。特に、構造変換過程を速度論的および熱力学的に特徴付けるとともに、表面欠陥が局所的な構造変化の制御因子のひとつであることを見出した。 機械刺激、蒸気、温度、磁場、電圧などの外部刺激の下、1粒子レベルで蛍光観測ができるシステムを新たに構築した。特に、機械的刺激や有機溶媒蒸気への暴露によって起こる構造転移や発光特性変化に着目し、学外研究者との共同研究を行った。さらに、電子ドナー、アクセプター、トラップ・発光分子からなる有機ブレンド膜において、有機材料系では初めてとなる輝尽発光(PSL)の観測に成功した。また、磁場効果の観測から、長寿命電荷分離状態が重要な反応中間体として存在することを明らかにした。
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