研究領域 | ソフトクリスタル:高秩序で柔軟な応答系の学理と光機能 |
研究課題/領域番号 |
20H04682
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
杉安 和憲 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (80469759)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超分子集合体 / 核形成 |
研究実績の概要 |
フルオロアルキル鎖を有するポルフィリン誘導体(1FF)が、πスタッキングによって1次元に自己集合し、この1次元集合体がさらにアルキメデススパイラル状に巻いた高次構造を形成することを発見した。マスバランスに基づく熱力学モデルによって、親フルオロカーボン性の相互作用が高次構造の安定化に寄与していることを突き止めた。さらに、自己集合の条件を精査した結果、1FFの1次元集合体がトロイド構造を形成し、これがさらに同心円状に集積した高次構造を形成することも見いだした。アルキメデススパイラル状構造と同心円トロイド状構造は選択的に作り分けることが可能であり、これは結晶多型の観点から非常に興味深い。 同心円トロイド状構造は、自己集合の初期に形成されるトロイド状分子集合体が鋳型となって成長していると考えられた。自己集合の条件を精査することによって、溶液中における均一核形成だけでなく、超分子集合体の界面における不均一核形成が、超分子集合体の形成過程で重要であることがわかった。 このメカニズムをもとに、同心円トロイド構造を有する超分子集合体を精密合成することに成功した。すなわち、不均一核形成が律速段階となるように、均一核形成を素早く開始する手法を開発し、これによって、高分子化学におけるリビング重合と類似のメカニズムを実現した。結果として、サイズの分布が狭い同心円トロイド構造を得ることが可能となった。 本手法を用いることによって、これまでになかったような複雑な超分子集合体の精密合成が可能になると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに報告例のない、同心円トロイド構造を有する超分子集合体の形成プロセスについて、そのメカニズムを明らかにすることに成功した。結晶成長と同様に、核形成プロセスが鍵となって、分子が集積することが明らかとなった。さらに、溶液中における均一核形成だけでなく、超分子集合体の界面における不均一核形成が、超分子集合体の形成過程で重要であることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
同心円トロイド構造では、それぞれのトロイドの曲率が一定でないことから、中心部と外周部における分子集積様式は異なっていると考えられる。AFMを用いて、同心円トロイド構造内部の機械的強度をマッピングする。また、AFM探針から局所的に力を加え、形態転移が引き起こされるかを観察する。これらの実験は、ソフトクリスタルの機械特性を分子レベルで理解する上で重要な知見を得る。
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