研究領域 | マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解 |
研究課題/領域番号 |
20H05322
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小川 英知 大阪大学, 生命機能研究科, 特任准教授(常勤) (20370132)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | オートファジー / 遺伝子導入 / ウイルス感染 / 複合体 |
研究実績の概要 |
細胞は細胞外からの様々な分子の侵入を即座に検知し,それらを排除するために選択的オートファジー機構を使用する。これまでに異物周辺分子のユビキチン(Ub)化が起こり,続いてオートファジー機構がリクルートされることが報告されているが,一方で異物の認識とその応答機構は不明な点が多い。この選択的オートファジー機構は,外来異物だけでなく核酸の導入に対しても同様に働くため,特に基礎研究や医療の場において, 核酸導入が必要な場面で大きな障害となる。申請者はオートファジーレセプターp62に着目し,p62の欠損が核酸導入効率の著しい促進効果を示すこと,その原因が細胞質に侵入した核酸周辺のUb化の遅延であることを突き止めている。本研究では, 核酸の認識に関与するp62複合体を同定し,オートファジー活性下の複合体構成因子の集積について経時的変化を追うことで,異物侵入に対する選択的オートファジー制御の実体を明らかにする。この研究成果は,異物に対する細胞の認識・応答機構の解明のみならず,核酸の導入法の確立やウイルスの感染防御における新たな方法論を確立させ,既存の技術や医薬品の効果を簡便な方法でより大きな成果に変えることを可能にすると考えている。昨年度は複合体の精製に成功し,構成因子の同定をおこなった。本年度はこれらの構成因子の機能解析に進める。またウイルス因子の発現している細胞からのp62複合体精製の結果,p62が強くウイルス因子と相互作用していることが判明した。これらの結果は,ウイルスの細胞内での活動のためにはp62の機能を阻害することが重要である事,そのためp62の機能亢進がウイルス排除に重要である事を示唆している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子導入特異的な複合体の構成因子の同定のため質量分析を行った。未処理細胞から精製した複合体の構成因子を比較したことで,遺伝子導入特異的な構成因子のみを解析することが可能となったため,効率的に実験を進めることができた。またこの複合体の精製度が高かったことから,質量分解析が順調に進んだため初年度の大きな目標の一つを達成できた。一方で,複合体の構成因子を精査した結果,p62に常に結合しているコア構成因子,および遺伝子導入などの細胞の環境変化に応じて相互作用を開始する構成因子から複合体が形成されていることが判明した。これらが二種類の複合体なのか単一の複合体なのかを決定するために,これらを分離するための手法として現在密度勾配法など幾つかの分離方法を検討している。
|
今後の研究の推進方策 |
複合体の構成因子の同定のための質量分析解析が進み,幾つかの候補因子の選定ができた。今後これらの因子の抗体を作製し複合体の形成を確認した後,機能解析を進める。単離した複合体が複数の複合体からなる可能性を調べる為に,構成因子の抗体をもちいた複合体の分離も進める予定である。また複合体の機能解析を進めるために,siRNAにノックダウン,ゲノム編集によるノックアウトを行い,構成因子の阻害剤がある場合にはそれらによる遺伝子導入効率の促進効果を検討する。これらによって遺伝子導入効率の促進効果に必須の構成因子,分子機構の同定を進める予定である。
|