フォトクロミック部位としてアゾベンゼンを有するジイミン型配位子を合成した。この配位子の光応答性を検討したところ、室温で紫外可視光照射することにより、可逆的にシストランス異性化反応を起こすことが分かった。この配位子に二価パラジウムを作用させたところ、対応するパラジウム錯体を得ることができた。さらに、トランス体の錯体についてはX線結晶構造解析に成功し、平面4配位しているパラジウムイオンの片側を、アゾベンゼン架橋が覆うような形で配置した、非対称な構造を有する錯体であることが明らかになった。 この錯体の重合活性を検討したところ、イソプロピリデンジアリルマロネートに対して重合活性を有し、閉館重合体としてシクロペンタン骨格を有するポリオレフィンが得られることが分かった。活性そのものは、既報にあるジイミン型配位子と同程度であった。興味深いことに、得られたポリマーの立体規則性を詳細に調べたところ、トレオジシンジオタクティックであることが分かった。これまでトレオジイソタクティック型のポリマーの合成例は報告されていたが、今回の配位子で初めてトレオジシンジオタクティック型のポリマーが得られた。さらに興味深いことに、このポリマーはハロゲン系の有機溶媒に対しゲル可能をすることがかった。透過型電子顕微鏡および走査型電子によりゲルおよびキセロゲルを観察したところ、ナノサイズのファイバー状構造体か観測された。トレオジシンジオタクティック型のポリマーは分子間相互作用により集積化し、ナノファイバーを与えることが分かった。
|