研究概要 |
これまでに、フォトクロミック部位としてアゾベンゼンを導入したジイミン型配位子を設計し、対応するPd(II)錯体を調整して、イソプロピリデンジアリルマロネートをモノマーとした重合挙動を検討してきた。その結果、アゾベンゼン型配位子では、配位子そのものの光応答性は良好であったものの、錯体体の光反応性が低く、in situでの異性化反応は困難であることが分かった。また、得られたポリマーはこれまで報告例のないジシンジオタクティック型の配列を有しており、有機溶媒と特異なゲル化挙動を示すことが分かった。これはジシンジオタクティック型ポリマーの構造が主鎖とほぼ垂直方向に置換基が出ているため、歯車がかみ合うような形で効率的にファンデルワールス相互作用を起こしているためではないかと考えられる。また、光反応性が低い理由としては、パラジウム錯体が共存するため、MLCTによる消光が起きていることが考えられる。そこで今回、新たにアゾベンゼンに代わりジアリールエテン部位を導入したジイミン型環状配位子(open-2,closed-3)を設計した。アゾベンゼンと比較して、ジチエニルエテンの異性化光反応は高速で起こるため、MLCTによる消光が起きにくいことを期待した。実際、種々検討を行った結果、イソプロピルアニリンおよびチオフェンを原料としておよそ18ステップを経て、目的とする環状フォトクロミック配位子を合成することに成功した。この配位子でもアゾベンゼン型の配位子と同様に、パラジウム錯体が得られることが分かった。
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