研究概要 |
フォトクロミック分子であるジチエニルエテンを架橋配位子とする多核有機金属錯体は、光スイッチング機能を有する分子ワイヤーとして機能する。本研究では、より高性能な分子スイッチや分子ワイヤーを創出することをめざし、ジチエニルエテンと酸化還元活性な有機金属錯体の複合化に取り組んでいる。本年度は、異種金属フラグメントをジチエニルエテンに導入することを目的に、鍵中間体となる単核金属錯体の合成を行った。得られた単核種のフォトクロミズム挙動を精査したところ、光反応性は金属部位の構造に大きな影響を受けることが明らかになり、高性能な分子素子開発に向けて分子設計の指針を得た。また、本研究では、ジチエニルエテン骨格を有する多核遷移金属分子触媒の開発にも取り組んでいる。クロミック部位近傍に触媒機能を有する遷移金属種を配置することによって、光や酸化還元によって反応を制御することができる触媒システムの開発をめざしている。本年度は、配位子としてジチエニル-1,10-フェナントロリンを用い、そのチエニル環上への金属フラグメントの導入を検討し、二核錯体を合成することに成功した。今後、二核骨格のクロミズム挙動の調査、フェナントロリン部位への触媒機能を有する金属種の導入による三核錯体の合成を検討し、新奇な触媒システムの構築をする。
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