研究概要 |
単体では制御しえなかったフォトクロミック反応性をコバロキシム錯体の異性化による結晶環境変化により制御することを目的として、フォトクロミック化合物を配位子としたコバルト複合錯体を新規に作成した。新規に合成したのは、サリチリデン誘導体を配位子とする複合錯体:(β-cyanoethyl)(N-(3,5-di-tert-butyl-salicylidene-3-aminopyridine) cobaloxime (cob-tBu-3SAP)(1)とアゾベンゼン誘導体を配位子とする複合錯体:(β-cyanoethyl)(4-aminoazobenzene)cobaloxime(2)である。1,2共に1分子中に2カ所の光反応部位が存在するが、1では、紫外光照射によりSAP部分のフォトクロミズムが起こり、可視光照射によりシアノエチル基部分の異性化反応が進行することが観測された。さらに、光異性化反応後に紫外光を照射することによって、SAP部位のフォトクロミズムの退色寿命を短くすることに成功した。単結晶X線構造解析により、3次元構造を明らかにし、構造と着色体寿命との相関を検討したところ、この理由は、結晶中の反応空間cavityの計算から、光異性化反応後にはSAP部位の周りの空間が広がり、eno1体への退色反応が容易になるためと考えられる。2では、4-アミノアゾベンゼン単体がフォトクロミズムを起こさないのに対して、複合錯体では、紫外光照射により、まずシアノエチル基の光異性化反応が進行し、その後、4-アミノアゾベンゼンが異性化してフォトクロミズムを起こさせることに成功した。このように、複合錯体を形成させることによって、フォトクロミズムを起こすことができたことや退色速度の寿命を制御することができたことは、意義深く、今後フォトクロミズムの応用のために、本研究の成果さらに発展させていくことが期待される。
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