イオン液体である[C_2mim][NTf_2]中でポリ(ベンジルメタクリレート)(PBnMA)は低温相溶・高温相分離のLCST型相挙動を示すことがわかっており、この高分子内にアゾベンゼンを導入した高分子も同様にLCST型相挙動を示す。本研究ではこの高分子を架橋剤によってゲル化し、温度変化によるイオンゲルの形状変化について詳細な検討を行った。懸濁重合によってマイクロメートルオーダーの微粒子を合成した。得られたゲルはシス体・トランス体で相転移温度が異なった。またシス体では熱履歴が観測されるものの収縮・膨潤は可逆であったのに対し、トランス体では最大収縮まで達すると温度を下げても膨潤はしなかった。ただし膨潤度測定の結果、収縮過程の途中でサイズが変化しないプラトー領域が観測されたが、この領域に達する前に温度を低下させたら可逆な収縮・膨潤を示した。またアゾベンゼン含有率を変化させた結果、トランス体は相溶を遅める作用があるのに対し、シス体は相溶を促進させる効果があることが示唆された。これはシス体がシスートランスの光定常状態であるため、動的な構造を有しているためであると考えられる。さらにゲル化していないリニアポリマーの解析で、トランス型のイオンゲルが再膨潤しないのは、静的な構造を有していることのほかに、速度論的な影響があることが示唆された。 また棒状イオンゲルを作製し、イオン液体中で紫外光を照射することで照射面が膨潤することを利用して、イオンゲルの形状変化を観察することに成功した。
|