イオン液体は陽イオン、陰イオンのみから構成される室温で液体の物質であり、高安定性、高導電性でかつ不揮発性、不燃性という非常に優れた特性を持つ。我々はイオン液体を高分子鎖に包括したイオンゲルを用いることにより水や有機溶媒などの分子性液体を包括した従来の高分子ゲルデバイスよりも安定でより高機能なデバイスを提案してきた。本研究では「フォトクロミック化合物」を「イオン液体」と「高分子」と融合することで、従来に無い新規機能性材料を提案することを目的としている。 イオン液体中で低温相溶・高温相分離のLCST型相挙動を示すポリベンジルメタクリレートにアゾベンゼンを化学的に結合させたゲルを作製し、光(紫外光、可視光)照射による相転移温度の違いを利用したゲルの膨潤・収縮の光制御を試みた。さらにイオン液体中で高温相溶・低温相分離のUCST型相挙動を示す、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)の一部にアゾベンゼンを結合させた高分子のイオン液体中における相挙動についても調査した。高分子はリビングラジカル重合の一つであるRAFT重合を駆使して、分子量分布が1.2以内のものを用いた。代表的なイオン液体である[C_2mim][NTf_2]中でこの高分子は、紫外光照射時に約11℃、可視光照射時に約23℃で相転移を示した。LCST型相挙動の際と同様に、USCT型の場合も光照射によって大きな相転移温度の違いを見出すことに成功した。またイオン液体を[C_4mim][PF_6]にすると紫外光・可視光照射時の相転移温度がそれぞれ約60℃、約85℃と大きな変化を示すことを見出した。相転移温度は高分子の分子量、アゾベンゼン含有率、イオン液体構造によって制御することが可能であり、この現象を利用した新規ソフトマテリアルへの応用が期待できるものと考えられる。
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