研究概要 |
{Ru(TPA)}ユニットと{Ru(bpy)_2}ユニットを拡張π共役複素環配位子であるtpphzにより連結した、新規非対称型ルテニウム(II)複核錯体の合成、及び単核錯体[Ru(TPA)(tpphz)](PF_6)_2の合成を行った。それらの錯体について、吸収、NMR、及びESI-MSスペクトルによるキャラクタリゼーションを行った。 複核錯体のアセトニトリル中での発光スペクトルは、615nmに発光極大を示した。これに対し、1当量の過塩素酸を添加したところ、吸収スペクトルには何ら変化が観測されなかったが、発光スペクトルにおいて発光極大が619nmに長波長シフトして観測された。このことは、基底状態ではtpphzへのプロトン化は進行しないが、励起状態においてtpphzのピラジン窒素へのプロトン化が進行し、励起三重項状態が安定化されることを示す。 これに対し、単核錯体では、アセトニトリル中で1当量の過塩素酸によりtpphzの非配位1,10-フェナンスロリン部分にプロトン化が進行し、吸収スペクトルに顕著な変化が観測された。また、単核錯体のアセトニトリル中での発光スペクトルにおいては、591nmに発光極大が観測された。1当量の過塩素酸を添加すると、その発光は殆どクエンチされた。現在その理由について検討中である。
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