研究概要 |
ジアリールエテン(DAE)の両末端にホール輸送能、あるいは電子輸送能を有する機能性分子を合成し、これらの化合物のフォトクロミック特性ならびに電圧印加に伴う導電性の変化などの電気的物性を検討することにより、光と電気の両方に応答する機能性材料を開発することが目的である。 ホール輸送性、あるいは電子輸送性部位としてそれぞれカルバゾールと1,3,4-オキサジアゾールを導入したチオフェン系のDAE類を合成し、カルバゾール環と1,3,4-オキサジアゾールの置換位置、置換基効果、およびスペーサーに関して詳細な検討を行った。溶液中では置換基の位置や種類、スペーサーによらず良好なフォトクロミズム(光閉環と光開環反応)を示すことがわかった。一方、薄膜状態では置換基効果が生じ、置換基を有しない場合と電子供与基を持つ場合に閉環体への異性化効率が高かった。また、置換位置に関しては、3-カルバゾリル基を持つDAE誘導体の方が対応する9位置換体よりも薄膜状態での異性化効率が高いことがわかった。次に、合成したジアリールエテンを含む素子(陽極側からITO、ホール注入層、ホール輸送層、DAE層、マグネシウム)を作成し、電圧印加による電流-電圧特性を調べた。その結果、開環体では電流がほとんど流れないのに対し、閉環体を最大限に含む光定常状態では電圧印加に伴い電流値が劇的に増大することがわかった。すなわち、開環体と閉環体の分子構造の差を利用することにより、電流値のON-OFF制御ができ、DAE層の膜厚の条件検討を行った結果、ON-OFF比は約10^4付近に達することを見出した。
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