1. 原子間力顕微鏡(AFM)によるフォトクロミズムならびに分子間力光制御の解明 AFMを用いて単一高分子を探針でつまみ上げ、その際に高分子鎖の伸縮により生じる力を測定できるが、この測定法はsingle-molecule force spectroscopyと称され、タンパク質や高分子鎖の伸縮挙動や分子間相互作用力の測定に適用されてきた。本研究では、光応答性のスピロベンゾピラン側鎖を有するフォトクロミック高分子の伸縮の計測にこの手法を適用した。スピロベンゾピラン-クラウンエーテル高分子をマイカ基板に吸着させ、その基板上でフォースカーブ測定を行うことにより、高分子を伸張させる測定を試みた。その結果、高分子の伸張を示す形状のフォースカーブが観測され、光照射に伴ってフォースカーブの観測確率や形状変化が認められた。さらに、両末端に結合性官能基を備えたスピロベンゾピラン高分子を新たに設計・合成した。 2. フォトクロミックミセルを用いるイオンセンシングならびに物質光制御 フォトクロミック配位子を含む高分子を一成分とする機能性ミセルを用いてフォトクロミックミセル系を構築した。その結果、フォトクロミック部位の光異性化に伴い、ミセル構造が顕著に変化することを見出した。 3. フォトクロミック配位子を用いる抽出光度定量の光制御 抽出光度定量のための高選択性フォトクロミック配位子を新たに分子設計し、水環境中の金属イオンの高感度定量を行う。本年度は、カリックス[4]アレーン配位子にスピロベンゾピランを発色(フォトクロミック)部位として導入し、金属イオンの抽出光度定量を検討し金属イオン抽出の光制御能を認めた。
|