結晶中で起きるフォトクロミック反応を利用すれば、結晶をメカニカルに動かすことができることを、アゾベンゼン、サリチリデンアニリンなどの代表的なフォトクロミック化合物について明らかにしてきた。今年度は新たに、アントリルメチレンインダノン結晶は、光照射によって屈曲することを見いだした。このような光屈曲は微結晶で観察されることが多いが、この結晶については、はバルクの単結晶でも屈曲することがわかった。結晶が光で屈曲する理由は、光の当たった結晶表面は異性化反応が進行して少し伸びるかあるいは縮むが、光の当たらない裏面は最初と変わらないためである。サリチリデンアニリン、フリルフルギドについては、光照射後の結晶構造は、出発物質と生成物のディスオーダー構造として解析されており、生成物も結晶相を形成することが明らかとなっている。一方、アゾベンゼン、スピロピランについては、異性化により分子の形は大きく変わるために、元の結晶格子中に留まることはできず、規則的な分子配列が失われてアモルファス化すると考えられる。このように、メカニカル結晶は、生成物が新たな結晶相を形成する結晶と、アモルファス化する結晶に分類できることがわかった。
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