研究概要 |
昨年度に検討したテトラ(3-チエニル)エテン誘導体ではジアリールエテン型のフォトクロミズム(PC)や,1電子還元型のECE機構で進行するエレクトロクロミズム(EC)が観測された.しかし,ビシナルの関係にある二つのチエニル基の立体配置が結晶中ではパラレルであることが,問題として残った.そこで,本年度はクーロン反発を利用した立体配置の鋼御を立案し,ピリジニウムカチオン性置換基を有するテトラ(3-チエニル)エテン誘導体[1^<4+>(BF_4^-)_4]の合成を検討した.現在の所,その合成はほとんど達成できたが,単離には至っていない.今後は対イオンをp-CH_3-C_6H_4SO_3^-に替え,安定性の高い塩として単離し,そのPCとECを溶液および結晶中で検討する. また,別な型のECを期待し,テトラ(2-チエニル)エテン誘導体(2)の合成を検討した.現在の所,目的物の合成には至っていない. さらに,本研究では,熱Cope転位(6電子ペリ環状反応)の機構について検討するべく,ヘキサアリールビスイミダゾール置換型1,5-ヘキサジエン(3)を合成した.現在はESRでローフィルラジカル型の4の存在を確認すると共に,そのPC特性と熱反応性を詳細に検討中である.さらに本研究では,テトラチエニルシクロペンタジエノン(5)の合成した.これは,テトラチエニルエテン型の分子ではなく,ビス(ジチエニルエテン)型の分子であるが,テトラチエニルエテンより合成が容易で,しかもテトラチエニルエテンと同じように,PCとECの両方が期待できるので,今後それを検討する.さらにシクロペンタジエノンのケタール化反応では,予期しないことに,ビシクロ[2.1.0]ペンテン(ハウゼン)骨格の異性体(6)が主生成物として生成することが分かった.これもジチエニルエテン骨格を有することから,そのPCを今後検討する.
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