黄色に発色する光安定なフォトクロミック化合物は、フルカラー表示材料への応用が期待される。これまでに、チアゾール基を有する誘導体1aのフォトクロミック挙動を検討すると、光着色体のモル吸光係数は大きく、光開環反応量子収率も10^<-3>と室内光で容易に光退色しにくいことを確認した。そこで、ビニル部位にフェニル基を導入した誘導体2aを合成しそのフォトクロミック挙動を検討した。誘導体2aは5段階で合成した。2aはセンター設備の^1H NMR、MSおよび元素分析より構造決定を行った。2aのヘキサン溶液に紫外光313nmを照射すると無色から黄色に着色し、その時の可視領域での極大吸収波長は417nmであった。1bの極大吸収波長(409nm)と比較して光着色体2bの最大吸収波長は8nmの長波長シフトを示した。また、光着色体の溶液に可視光を照射すると元に戻る可逆なフォトクロミズムを示した。ヘキサン溶液中での2aの光転換率は88%であり、1a(94%)と比較するとわずかに低下したが類似する吸収スペクトル変化を示した。また、光着色体化および2bのモル吸光係数は、17100と16900 M^<-1>cm^<-1>とそれぞれ高い値を示し、黄色に発色する色素としては高いモル吸光係数であることを確認した。2bの熱安定性をデカリン溶媒に溶かして80℃で行った。100時間後も熱耐色は認められずジアリールエテン誘導体同様に高い熱安定性を有することが明らかとなった。
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