本年度は、放射状(Radial)偏光及び円周状(Azimuthal)偏光によって誘起される表面レリーフについて調べた。Radial偏光を集光すると、通常の集光では打ち消し合うことで創り出せない光軸方向の偏光成分(Ez)を有する単一光スポットを創り出すことができる。また、Azimuthal偏光を集光すると、ドーナツ状の光強度分布が形成され、その偏光方向は円周状であるので、偏光方向に光強度勾配を持たない特殊な光スポットを形成できる。これら特殊な偏光状態を、お互いの結晶軸方向の異なる分割λ/2波長板を用いて創り出し、それらをNA=1.4の対物レンズでアゾ系ポリマーフィルム表面に集光した。入射光の波長は532nmである。誘起された表面レリーフをタッピングモードのAFMで観察した。 Radial偏光によって誘起された表面レリーフをと測定した結果、誘起される表面レリーフ形状にフィルム膜厚依存性があることを発見した。具体的には、フィルム膜厚が39nmより薄い場合ではスポット中心部が凹み、39nmより厚い場合ではスポット中心部が隆起することが分かった。さらに、膜厚39nmでは、光を照射しているにも関わらず、ほとんど表面レリーフを誘起することができなかった。このように、膜厚39mmを境に全く異なる形状の表面レリーフが誘起されることを発見した。このような膜厚依存性は、面内偏光(直線偏光)では見られず、Ez偏光特有な現象であることが分かった。考えられるメカニズムとして、フィルム内部での光強度分布の膜厚依存性、または、膜厚が薄くなることによるフィルム物性の変化が原因であると考えられる。 Azimuthal偏光では、ポリマーは光強度の強い部分から弱い部分へと移動した結果、スポット中心部に隆起、外縁部にドーナツ状の隆起構造が形成されることが分かった。
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