公募研究
新たな用途発掘を目的として、ジアリールエテン反応機構の理論的研究を行った。非経験的分子軌道法を主たる方法とし、加えて古典分子動力学法、半古典分子動力学法を活用した。一部、自作のゆらぎ解析ツールも活用した。蛍光色素PTBの結合位置による閉環量子収率の違い:フェニル基とベンゾチオフェン基という僅かな違いが、スピン軌道相互作用に約1桁の違いを生み出すことが計算から示された。三重項の関与は計算科学的には自信を持って言えるが、レーザー分光から三重項が観測されないことが最終結論として世に出すまでに、懸案事項である。金属を含有したジアリールエテン: RuとFeにおけるフォトクロ反応性の違いは、上記と同じく三重項の関与により解釈できた。Fe系における置換基の違い(COとPPh3)には精妙なスピン軌道相互作用が介在している。量子ビートの解析:振動モードと量子ビートの周波数に良好な対応が観測された。親水性・撥水性を決定する分子のデザイン: 内田らとの共同研究において分子の分極特性を見積もったり、結晶成長のメカニズムを学習した。新規Pt系のメカニズム解明: 松下らの系を計算し、種々フォトクロ発現の要因解析をおこなった。現在、溶液相におけるラジカル種による実験系の再現に漸くたどり着いた。フォトミスムの広義の展開として、光合成の初期過程を研究テーマとして課題設定するに至った。これはこの領域研究がもたらした大きな進展である。
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Langmuir
巻: 27(Inpress)
Journal of the American Chemical Society,
巻: 133 ページ: 2621-2625