研究実績の概要 |
本研究の目的は星団形成における磁気的効果、星団中の大質量星が放つ輻射によるフィードバック効果、およびそれらの相互作用効果について主として数値シミュレーションを用いて明らかにすることであった。 この目的に沿って、星団形成の主な駆動プロセスの一つと考えられる分子雲衝突を想定し、その場合の磁気的効果について一連の3次元磁気流体シミュレーションを実行して調査した(Sakre et al., 23)。雲衝突後期、衝撃波圧縮を受けたガス層が周囲の希薄背景ガス中に露出した段階になると磁気圧駆動の急速な膨張が起こり、これは星団形成を抑えるnegativeな効果があることを見出した。磁場が星団形成にとって果たす役割は雲衝突の持続時間に依存し、この傾向は観測結果が示唆するものとも一致する。一方、球状星団の前駆体に相当するともいわれる、若い大質量星団形成時の観測的特徴に関する研究も進めた(Inoguchi et al. 24)。こうした星団の形成時に持続する高密度電離領域からの電波連続光(free-free)放射に着目することにより、数値シミュレーション結果が観測と非常に整合的であることが分かった。 途中で最初雇用したPD研究員が民間就職して離脱してしまうアクシデントがあったが、かわりに雇用した研究員により、代替策として低金属量原始惑星系円盤の研究を進めた。円盤分裂からの巨大ガス惑星形成可能性を示した論文を皮切りに(Matsukoba et al. 23)、特にガス-ダスト2流体の2次元数値シミュレーションを行って、円盤形成から~500kyrにわたる円盤全体の長期進化を追跡した(Matsukoba et al. 24, submitted)。すると驚くべきことに、0.1Zsunの低金属量下で進化の終盤にさしかかると、ダストの多重リングが自然と現れた。
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