溶液中の金属ナノ粒子に対して、ナノ粒子の吸収波長に共鳴する波長のパルスレーザーを照射すると、吸収された光子エネルギーによりナノ粒子は数万度以上の超高温状態になる。さらに周りの溶媒へ熱拡散が起こるため、ナノ粒子近傍(数nm~数百nm)は高温高圧となりナノプラズマが生成する。これまでに開発した金ナノ粒子を集積化したリゾチーム結晶を利用して、このナノプラズマの特性評価を行う。すなわち結晶中への単一レーザーパルスの照射によりナノプラズマを生成すると、リゾチーム分子の分解などの反応が惹起され、様々な反応物が金ナノ粒子の周囲に残りナノプラズマ痕として結晶中に刻印される。このナノプラズマ痕を分析することによりナノプラズマの特性評価を行うことが本研究の目的である。先ず、金微粒子集積化リゾチーム結晶へパルスレーザーを照射するシステムを開発した。これを用いて、パルスレーザー照射後の結晶の形態を観察したところ、金微粒子周囲のナノプラズマ生成により結晶のセクター界面で結晶の劈開が起こることを見出した。また、結晶中のナノプラズマ中に発生したキャビティーがバブルとしてナノプラズマ痕を結晶中に残すことを見出した。さらにナノプラズマ中の金微粒子から生成した金イオンと結晶中のリゾチーム構成アミノ酸などと配位錯合体を形成し、その結果、結晶中の金微粒子が消失する反応を見出した。また、光学顕微鏡により単一のナノプラズマ痕の構造解析を行うことを目指し、暗視野顕微鏡法による単一の金微粒子、銀微粒子の検出に成功した。
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