本研究では、非相反応答やその逆効果を利用して熱整流効果やらせん磁性体における磁気キラリティ依存現象を開拓することを目的としている。本年度は、まずマルチフェロイックらせん磁性体であるYタイプ六方晶フェライトBaSrCo2Fe11AlO22においてマイクロ波の非相反性を開拓した。配向多結晶試料に電極を取り付け、強誘電分極の方向や磁場を変えながらマイクロ波応答を測定した。その結果、マイクロ波の伝搬方向によって吸収が異なる非相反性を観測した。この非相反性は磁場や電気分極の符号を反転すると逆になる性質があり、外場によりコントロールできる特徴を持つ。非相反性の大きさは300Kで11%、200Kでは28%にも達している。このようなコントロール可能な非相反性が室温でも十分に観測できたことから、将来のマイクロ波通信の高度化に寄与できる可能性もある。一方で、様々ならせん磁性体における磁気キラリティ制御も行った。らせん磁性体MnAu2薄膜における磁気キラリティ制御を行い、制御されたキラリティを非相反伝導によって観測した。さらには、高電流密度のパルスを用いてキラリティをスイッチすることも達成した。この物質のらせん磁性の転移温度は335Kであり、室温でも十分にキラリティ制御が可能となっている。さらには、他のらせん磁性体EuP3におけるキラリティ制御と観測も行った。現在のところキラリティ制御を示唆する予備的なデータが得られている。これらの結果はらせん磁性を利用したスピントロニクスへと発展する可能性がある。
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