公募研究
本研究課題では、電子液晶が形成する新奇な超伝導状態における時間反転対称性の破れを、磁気光学カー効果を利用して超高感度に測定することを目指している。他にも、前期公募研究に引き続き、量子液晶のもつ典型的性質である空間回転対称性の破れ(ネマティシティー)を検出・制御する研究も継続した。まず本年度は代表者の異動に伴い研究装置をすべて移転し、新たな研究室を立ち上げる作業を行った。移転作業は4-6月にかけて行い、実験を再び行える体制を整えた。そのうえで、本年度はカゴメ格子を持つ金属CsV3Sb5に対して行ってきた高感度磁気光学カー効果の研究を継続した。この物質は94Kで電荷秩序、3Kで超伝導を示すが、我々は電荷秩序相において時間反転対称性が破れていることを示す結果を得た。しかし、他グループから異なる実験結果も報告されたため、本年度は研究結果の吟味を行ってきた。時間反転対称性を破る自発的カー効果の再現を取るとともに、試料依存性も測定した。それらの結果、非常に質のいい試料のみで自発的カー効果が出ることがわかった。本結果について論文を投稿する予定である。カー効果に関しては、他に走査型装置の開発や磁場中での測定に向けた技術開発なども行った。ほかに、CsV3Sb5に関しては、磁場方向制御下での比熱測定から求めた上部臨界磁場が非自明な6回振動と2回振動を示すことを明らかにし、「創発回転対称性」を破った多成分超伝導秩序変数の実現を示した。レフェリーレポートへの回答に長い時間を要したが、2024年4月にNature Communications誌で出版された。また、強磁性体URhGeにおけるFiber Bragg grating法を用いた異方的磁歪の研究によって、強磁性体におけるピエゾ磁気効果を初めて観測した。この結果は現在論文を投稿中である。他に超伝導ダイオード効果などの共同研究の論文を出版した。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 7件、 招待講演 4件) 備考 (3件)
Nature Communications
巻: 15 ページ: 2888(1-9)
10.1038/s41467-024-47043-8
Communications Physics
巻: 6 ページ: 290(1-8)
10.1038/s42005-023-01409-4
Physical Review Research
巻: 5 ページ: 023168(1-13)
10.1103/PhysRevResearch.5.023168
https://www.t.kyoto-u.ac.jp/ja/research/topics/20240411
https://sk.kuee.kyoto-u.ac.jp/person/yonezawa/index.html
https://sk.kuee.kyoto-u.ac.jp/ja/