本研究は、両親水性ブロック共重合体水溶液で形成される水圏ミクロ相分離構造と構造形成機構の解明を目指している。 昨年度実験を実施したナノメートルスケールの双性イオン高分子ドメインに閉じ込められた水の結晶化挙動と水素結合状態についての研究成果を論文投稿した。ミクロ相分離により生じた界面近傍の水は僅かに結晶化しやすい状態であり、水素結合ネットワークの僅かな乱れも観測された。この研究は、新学術領域の研究者との共同研究として実施された。 水溶性双性イオン高分子であるポリカルボキシベタインを構成要素として含むブロック共重合体が、水/エタノール混合水溶液において、特定の水/エタノール混合割合でミクロ相分離構造を形成する現象を見出した。構成分子鎖の共貧溶媒効果による凝集に誘導されてメゾスコピックスケールの格子状秩序構造を形成する「共貧溶媒効果誘起ミクロ相分離」と位置付けられる新たな相分離系であり、分子量や共重合組成に応じた相分離挙動が示された。 糖鎖結合能を示すフェニルボロン酸とポリカルボキシベタインで構成されるブロック共重合体が水中で形成する粒子状分子集合体について、双性イオンとフェニルボロン酸部位の相互作用に起因して分子集合体が形成されるpH領域が拡張し、双性イオン高分子殻が静電反発による分子集合体の崩壊を抑制する現象を見出した。 総じて、水中で分子集合体を形成する双性イオン高分子含有ブロック共重合体の分子集合体形成特性について、さまざまな特異性が示された。
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