公募研究
ミトコンドリア電子伝達系を阻害し細胞呼吸を止める猛毒であるシアン化物イオン(CN-)に硫黄原子Sを転移してチオシアン酸イオン(SCN-)に解毒・弱毒化する酵素として,我々哺乳類がロダネーゼ(TST)を有することは公知の事実だが、青酸配糖体を多量に含むユーカリ葉のみを食するコアラとは違い,我々がCN-を多く含む食餌を日常的に摂る,あるいはCN-に環境被爆する機会はほぼない。つまりTSTの役割はおそらく異なり,そして未だ不明である。TSTの相同酵素でゲノム近傍に位置する MPSTも,in vitro実験ではThiosulfateを基質とするTST活性を有するが,その生理的意義も不明である。本研究では,一昨年に作成発表したMPST欠損マウス,また新規作成したTST欠損マウス及びTST/MPSTダブル欠損マウスを比較解析し,それら生体内シアン解毒・硫黄転移酵素の存在意義と役割を明らかにすることを目的としている。本年度は、これら3種の遺伝子欠損マウスと野生型マウス②体して高濃度シアンイオンを負荷(NaCN投与)し、血中あるいは尿中のCN-及びSCN-の濃度を測定し、症状を観察した。その結果、MPST欠損マウスあるいは対象野生型マウスは投与CN-をSCN-に体内で変換して尿中排泄するが、TST欠損マウス及びTST/MPSTダブル欠損マウスはそれができずに血中に高濃度のCN-を蓄積し、投与後長時間無動状態となるなどど高い脆弱性を示していた。したがって、これら2酵素のうちTSTは高濃度シアン被爆時にその解毒に大きな役割を果たすことが判明した。
2: おおむね順調に進展している
当初の目的であるMPST欠損マウスあるいはTST欠損マウスのシアン負荷時の脆弱性の違いを明確に確認することができた。
今後は、高濃度シアン負荷時ではない定常状態での遺伝子欠損マウスの異常を調べる。これまでの解析では、MPST欠損マウスでの尿中へのメルカプト乳酸の高濃度排泄、そしてTST欠損マウスの血中シアン濃度の上昇などを確認している。したがって、定常状態でもある程度の異常があることがあきらかになっていることから、各種病態モデルでの両酵素の働きなどを調べていく。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Methods Mol Biol
巻: 2596 ページ: 217-230
10.1007/978-1-0716-2831-7_16
Int J Mol Sci
巻: 24 ページ: 4931
10.3390/ijms24054931
Endocrinology
巻: 164 ページ: 1716-1726
10.1210/endocr/bqad019
巻: 24 ページ: 2659
10.3390/ijms24032659
Am Heart Assoc
巻: 11 ページ: e026889
10.1161/jaha.122.026889
巻: 23 ページ: 4726
10.3390/ijms23094726
Yakugaku Zasshi
巻: 142 ページ: 1333-1334
10.1248/yakushi.22-00159-F
巻: 142 ページ: 1335-1343
10.1248/yakushi.22-00159-1
https://www.shoyaku.ac.jp/research/laboratory/eisei/teacher/50