研究概要 |
我々が開発したテルペン活性のスクリーニング法では、基質消費活性が高いほど、つまり細胞活性が高いほど「より白い」コロニを形成する。「白さ」を指標として、テルペン酵素の細胞活性をハイスループットに見積もることができる。本年度は,これを利用して,テルペン酵素の大腸菌活性の飛躍的向上を目指した。 タバコ由来5-epi-aristolochene(防カビ剤の前駆体)合成酵素(TEAS),バジル由来ゲラニオール合成酵素,イチイ由来のタキサジエン(抗がん剤タキソールの前駆体)合成酵素(TaxS)を変異PCR法によってランダム変異(~2変異/gene/世代)を導入し,ライブラリ化(多様化)した。つぎに,それぞれを黄色ブドウ球菌由来のC30カロテノイド合成経路とともにひとつの大腸菌内に発現させた。活性の無い酵素変異体の導入された大腸菌は,色素由来の黄色いコロニを与えたが,活性をもつ変異体を導入した細胞は,白っぽいコロニを与えた。特に(親よりも)色目の低いコロニには,基質消費能の向上した(つまり活性の高い)酵素変異体がみこまれる。それらを拾い上げ、次世代の親とする作業を行った。 各世代に得た変異体の遺伝子の遺伝型を調べたところ,たしかにそれらの大腸菌活性が向上していた。ゲラニオール酵素の活性変異体を調べたところ,その活性向上は,おもに異種発現性の向上によるものであった。培地体積・時間あたりの最大テルペン生産量(mg/L/h)をガスクロマトグラムのピーク面積から算定したところ,10mg/L培地程度のテルペン生産量を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
手法についてはほぼ確立し,ゲラニオール,アリストロケン,タキサジエンなどの合成酵素の大腸菌活性変異体はとれているので,おおむね順調な進展といえる。 なお,当該年度に,領域内の複数の研究者が我々の手法を試用し始めてたことから,望み通りの貢献ができつつあると自負している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,多世代にわたるテルペン酵素の進化工学に是非着手したい。 本年度の研究に中で,もう少し,プラットフォーム作りに投資をする必要性を感じた。我々の課題研究の推進のためはもちろんであるが,特に,我々の手法を他の研究者に使っていただくうえでも,多少の職人芸を要する現在の手法は,多分に改良の余地がある。「だれでも使える」手法にまで標準化することによって,「さまざまなテルペン酵素で独自のサイエンスを展開する領域内の研究者に幅広く貢献できることも目指したい。
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