研究実績の概要 |
<研究内容>本研究は、アスペルガー障害を持つ成人を対象に、自己理解、対人認知、感情の自己制御を促す集団療法を週1回3ヶ月実施し、その前後でfMRIを実施し、アスペルガー障害の神経基盤と集団療法による神経基盤の可塑性を明らかにすることを目的として実施された。 対象者60名のアスペルガー障害の診断には、DSM-IVおよび自閉症診断面接改訂版(ADI-R)、自閉症観察スケジュール(ADOS)を用いた。対象者を介入群と統制群とにランダムに割り付け、介入群は、4、5名のアスペルガー障害患者で1グループを形成し、心理社会的介入プログラムに参加し、統制群は、通常の精神療法のみを受けた。両群に対して、不安や抑うつ気分、生活の満足度、ストレス対処行動、自己の感情認知、心の理論課題、全般的生活機能評価、3テスラMR装置(GE Signa 3T MRI)を用いてfMRI検査を計2回実施した。 その結果、介入前後で、ストレス対処行動、自己の感情認知、心の理論課題、全般的生活機能評価に変化が見られた(黒田ら, 2012)。MRIデータでは、アスペルガー障害の神経基盤として、人の表情のような非言語的情報はあまり処理されず、言葉のような言語情報の処理が優勢となる特徴があることが明らかになった(Watanabe et al. 2012a,b)。 <意義>国内外ともに、国際的な診断基準を用いて成人のアスペルガー障害を診断した上で、集団療法を実施しその効果を検証する研究は行われていない。したがって、本研究により成人のアスペルガー障害に対する集団療法によって社会機能が高まることが明らかになったことは意義が大きい。さらに、脳画像データから明らかになった対人関係場面での情報処理特性が介入により変化するかについての解析が今後重要となる。
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