研究実績の概要 |
磁気共鳴画像(MRI)を用いた脳構造・機能画像解析が一般的となったが、A) 少ないサンプルサイズ、B) 計測パラメータや前処理方法の違い、C) 妥当性・信頼性の担保、D) 年齢、性別などの非線形な影響、といった問題が明らかとなり、脳MRI研究を新規に立ち上げることはより困難となってきた。本研究では、多施設・大規模の機種間差軽減済みデータを用いて、小規模MRI研究結果の妥当性・信頼性を担保することを目的としている。現在までの進捗として、研究①では、ハーモナイズ技法と非線形な発達・加齢変化解析を確立し、これらの技術を用いて、新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言による思春期海馬体積の影響(Cai et al. JAMA Netw Open 2024)、国際コンソーシアムENIGMA CHRデータを用いた精神病ハイリスク群を判別する機械学習器の作成(Zhu et al. Mol Psychiatry 2024)といった成果を得た。現在、これらの技術によって国内12手順、3,706計測のデータセットを作成し、さらなる解析を進めている。研究②では、この3,706計測データに基づき複数のハーモナイズ技法を検証し、小規模脳画像データを組み合わせることが可能な条件を求めた。研究③では、これまで精神神経疾患領域で導入された標準プロトコルに適用可能な拡散テンソル画像の前処理手法を確立し、安静時fMRIについても検討を進めている。2024年度にはいずれも妥当性・信頼性の検証を終了し、大規模データへ適用して共通データセットとして共有することを目指す。研究④では、今後のさらなるMRI研究の大規模化を見越して、MRI解析ではなく上記データを利活用できるようなセミナー、チュートリアルの開催を予定している。
|