研究領域 | 散乱・揺らぎ場の包括的理解と透視の科学 |
研究課題/領域番号 |
23H04136
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
太田 薫 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 学術研究員 (30397822)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 波面制御法 / 超短パルス光 / 透過行列 / 過渡吸収法 / 時間分解分光法 |
研究実績の概要 |
光学的に不均一な媒質をレーザー光が透過する際、散乱が起こり、ある特定の場所に集光することが非常に困難となる。このため、散乱過程は分光法や微小領域でのイメージングにおいて大きな障害となり、その適用は困難であると考えられてきた。本研究では、散乱体透過後の微小領域での時間分解過渡吸収(ポンプ‐プローブ)法の開発を目的とする。今年度は原理検証のための実験を行った。実験ではポンプ光として、800 nmの超短パルス光を用いた。また、プローブ光は800 nmのパルス光をサファイア板に集光して発生させた白色光を用いた。ポンプ光とプローブ光は同軸に重ね、焦点距離100 mmのレンズでサンプルに集光した。散乱体にはホログラフィック拡散板を用いた。サンプル面でのポンプ光、プローブ光の散乱パターンをCMOSカメラを測定した。まず、ポンプ光の散乱体透過後の透過行列を測定した。透過行列の位相共役を計算し、ポンプ光の波面制御を行うことで、散乱体透過条件下において、ポンプ光をサンプル中のある1点に集光した。その後、散乱体を透過したプローブ光を用いて、IR140メタノール溶液の過渡吸収信号の検出を試みた。その結果、波面制御によりポンプ光を集光した場所で過渡吸収信号の増大を観測することができた。また、バックグラウンドとしてポンプ光の散乱による弱い過渡吸収信号も観測された。現在、波面制御による過渡吸収信号の検出感度の最適化を行うために光学系や測定プログラムの改良を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究において、通常のレンズを用いた光学系での原理検証実験を行った。散乱体透過条件下でポンプ光の波面制御を行うことにより、ある特定の場所での過渡吸収信号の増大を観測することができ、提案手法の有用性を確認することができた。このため、研究はおおむね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、対物レンズを用いた光学系を構築中であり、今後、微小領域での実験を行う予定である。また、散乱体透過後の過渡吸収信号の検出の高感度化も併せて行い、提案手法の長所、短所を明らかにしていく予定である。
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