研究領域 | マルチファセット・プロテインズ:拡大し変容するタンパク質の世界 |
研究課題/領域番号 |
23H04251
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 穂高 東京大学, 定量生命科学研究所, 客員准教授 (80802975)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | mRNA / 翻訳 / poly(A)鎖 / イメージング |
研究実績の概要 |
翻訳は、mRNAの配列情報をもとにタンパク質を合成する過程であり、多面的なタンパク質世界の中核をなす現象である。その重要性ゆえに、これまで長らく精力的に先行研究が行われてきたが、実はその大部分は生化学的な手法(細胞を破砕して得られるライセートを用いた手法など)によるものである。これはすなわち、多面的なタンパク質世界を長年にわたり「同一の視点」から眺めてきたような状況ともいえる。そこで本研究では、翻訳の制御過程を細胞内において高時空間解像度でイメージングできる申請者独自の新規技術(Kobayashi & Singer, 2022, Nature Commun.)を「新しい視点」として活かし、近年論争になっている「翻訳はpoly(A)鎖によって促進されるのか・されないのか?」といった問いに、mRNA一つ一つの翻訳状態を細胞内で実際に可視化することで答える。これにより、多面的なタンパク質世界を理解する一助として、翻訳の典型的・非典型的な制御機構について理解を深めることを目的としている。2023年度の研究実績の概要としては、本研究の要となるpoly(A)鎖が有り・無しのレポーターmRNAを細胞内において発現させる系を確立すると共に、本発現系とイメージング系の最適化を精力的に進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度までの進捗状況としては、まず本研究の要となるpoly(A)鎖が有り・無しのレポーターmRNAを細胞内において発現させる系を確立し、双方の翻訳活性を実際に細胞内で可視化した。具体的には、レポーターmRNAを内在性のmRNAと同程度の細胞内濃度で発現させ、smFISHと呼ばれる手法によりmRNAを1分子感度で可視化した。同時に、SunTag(レポーターmRNAのORFにコードされている)と呼ばれるペプチドを免疫染色し、mRNA上の新生ペプチドも1分子感度で可視化することで、その翻訳活性も可視化した。以上の進捗状況を踏まえると、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度までの進捗状況を受けて、2024年度においては、MATLABを用いた画像解析フローにより、細胞内の全てのmRNAについて翻訳活性の定量化を進める。以上の定量解析を、poly(A)鎖が有り・無しのレポーターmRNA双方について行い、比較統計解析を行う。さらに、poly(A)鎖が有り・無しのレポーターmRNAだけでなく、poly(A)鎖の長さを段階的に変化させた新規レポーターmRNAシリーズについても構築し、比較統計解析に追加する。これにより、これまでの翻訳研究の中で最も信頼できるレベルで、翻訳とpoly(A)鎖の因果関係を(有無だけでなく、長さとの関係性についても)検証する。
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