公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
B細胞を含むすべての血液・免疫細胞は造血幹細胞から作られる。その過程で多能性の造血幹細胞は徐々に分化能が限定されていき、最終的にB細胞にしかなれない前駆細胞に運命決定される。E2A、EBF1、PAX5など様々な転写因子がB細胞への運命決定に関わっているが、詳細は明らかでない。特にこれらの転写因子同士がどのようなネットワークを形成し、B細胞への運命決定を制御しているのか不明である。申請者らは最近このB細胞への運命決定に必要な転写ネットワークを調べる新しい分化誘導系を開発した。そこで培養細胞の遺伝子発現を網羅的に解析し転写因子間ネットワークのモデルを構築することを目的とする。本年度は研究計画に基づき、多能前駆細胞株(iLS細胞)からB細胞系列へ分化誘導後の経時サンプルを用いて網羅的な遺伝子発現解析(RNA-seq)およびエピジェネティック解析(ChIP-seq)を行った。RNA-seq解析から転写因子の発現パターンによっていくつかのクラスターに分けられることが明らかとなった。Ebf1, Pax5などB細胞特異的転写因子はB細胞へ分化誘導後、48時間後から急激に発現が上昇した。逆に、多能性を維持するために必要なMeis1, Gfi1などは徐々に発現が減少した。ChIP-seq解析によりヒストンの修飾を調べると、Ebf1, Pax5などのプロモーター領域では分化誘導前には抑制マーカーであるH3K27me3が多く見られたが、分化が進むに従って減少した。逆に、活性化マーカーであるH3K4me3は発現の上昇に伴い増加した。一方、他の系列に特異的な遺伝子の発現は抑制され、プロモーター領域にH3K27me3が多く認められた。これらの結果からB細胞への運命決定が起こる際にはエピジェネティックにB細胞プログラムが活性化されると同時に、別の系列の分化プログラムが抑制されることが示された。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究計画のとおり、多能前駆細胞(iLS細胞)を用いてB細胞系列への決定過程における網羅的な遺伝子発現およびエピジェネティック解析を行った。この解析により転写因子を含めた系列特異的遺伝子の発現がエピジェネティックに制御されることによりB細胞系列への運命決定が促進されることが明らかとなった。
研究はほぼ実験計画通りに進んでいる。今後は論文にまとめることを念頭に必要な実験を行なっていきたい。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
Nature
巻: 507 ページ: 462-470
10.1038/nature13182.
巻: 507 ページ: 455-461
10.1038/nature12787.
Proc. Natl. Acad. Sci. USA.
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