2018 Fiscal Year Annual Research Report
3D morphogenesis of epithelial cell sheets in vitro
Project Area | Discovery of the logic that establishes the 3D structure of organisms |
Project/Area Number |
15H05858
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
芳賀 永 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (00292045)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 誠一郎 北海道大学, 先端生命科学研究院, 助教 (10719933)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞・組織 / 上皮細胞シート / ゲル基質 / アクトミオシン / 集団運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はインビトロ系における上皮細胞シートに対して物理的環境を制御することで3D構造を培養シャーレ内で作り出し,3D組織が形成される力学的原理の解明を目指す. これまでに,トランスウェルに上皮細胞シートを培養し,基底部側を高浸透圧にすると,上皮細胞シートが自発的に変形しドーム状の構造が形成されることを見出した.ドーム構造の保持時間が短いという問題を克服するために,平成30年度ではゲニピンで架橋したマトリゲルをあらかじめトランスウェル底面に塗布しておくことでドーム構造を長時間保持することに成功した. さらに,初期胚発生インビトロモデルの構築を継続して行った.球殻状のゲルカプセルを作成し,カプセルの表面にヒト皮膚繊維芽細胞(HDF細胞)を播種すると,カプセルの形状があたかも原腸陥入のように内側に陥没することが明らかとなった.その際,ミオシン調節軽鎖のリン酸化阻害実験を行うことで,カプセルの形状変化が繊維芽細胞の基質把握力に起因することが明らかとなった.上皮細胞を用いた実験も行ったが,カプセルの形状変化の観察には至っていない. また,インビボ系で観察される管状組織の捻転運動が上皮細胞の回転キラリテイに起因するものなのかを調べる目的で,平成30年度は,核が光る変異株(H2B-Emerald-MDCK細胞)を樹立し,接着領域を制御したパターン基盤に細胞を播種することで細胞集団の回転運動を観察することに成功した.しかしながら,回転キラリテイを解析した結果,誤差が大きく有意な差が得られなかったため,ターゲットタンパク質の強制発現系の構築にも着手した. これらの実験に加え,扁平上皮がん細胞(A431細胞)をマトリゲル中に3D培養し,細胞塊が集団で回転運動する様子を経時観察した.平成30年度では,数理モデルの構築を担当する秋山グループと連携し,集団回転運動のモデル構築を継続して行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成30年度では,研究実施計画をほぼ全て遂行することができた.さらに,当初は平成31年度に計画していた実験にも着手することができた.具体的には,ゲニピンで架橋したマトリゲル上で上皮細胞シートのドーム構造が形成されるメカニズムを調べるために,ゲル基質の膨潤度解析,ミオシン調節軽鎖のリン酸化の免疫蛍光染色,各種阻害剤の投与実験などを行う準備を進めた.ゲルカプセルを用いた胚発生インビトロモデルの構築実験では,ピペット吸引法によるゲルカプセルの弾性率測定,蛍光色素で標識したHDF細胞の形態変化観察にも着手し,観察に適切な蛍光色素の選定をほぼ終えることができた.さらに,パターン基盤に播種した細胞集団の回転キラリテイを調べるために,回転キラリテイに寄与する可能性が高いミオシン1Dを過剰発現させるべくプラスミドの構築を進めることができた.回転運動方向の異なるサブクローン株の樹立にも着手した.細胞集団の3D回転運動については,A431細胞との比較のために上皮細胞(MDCK細胞)を包埋培養し,細胞数の増加と回転運動の関係を調べることで運動方向が同期する相関長を見積る実験の準備を進めた.平成30年度も国内外でのシンポジウム、セミナーなどで招待講演を受けて、これまでの研究成果を発表し、とくに上皮細胞シートのドーム形成実験については,秋山グループと共同でモデル構築を行い,共著の論文を投稿する段階にまで進むことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は研究実施計画の最終年度となるため,それぞれの研究テーマにおいてターゲットを絞り込んで実験を行い,秋山グループ,井上グループとの連携をこれまで以上に深めることで3D形態形成モデルの構築を行い,論文として投稿することを目指す.具体的には,上皮細胞シートのドーム形成については,アクアポリンによる水輸送が主要因であるという仮説を立てて実験を行う.初期胚を模倣したゲルカプセルの実験については,HDF細胞を蛍光色素でモザイク標識し,細胞の形態変化を経時観察することで,ゲルカプセルの変形とHDF細胞の基質把握力との関係をもとに力学モデルの構築を目指す.細胞集団の回転キラリテイについてはミオシン1Dにターゲットを絞り,過剰発現,発現抑制,サブクローン株の樹立を行い,インビトロ系における回転キラリテイの有無を明らかにした上で,得られた結果を松野グループと共有し,ショウジョウバエで見られる後腸の捻転運動のメカニズム解明を共同で目指す.マトリゲルに包埋した細胞塊の回転運動については,A431細胞との比較としてMDCK細胞を用いる.MDCK細胞の場合,細胞数の増加に伴って上皮細胞極性に起因する回転運動阻害が予想されるため,得られたデータから接触追従の相関距離を見積もることが期待できる。数理モデルの構築を秋山グループと共同で進める。
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Research Products
(7 results)